飲食店を開業するときの営業許可は、食品衛生法に基づき、店舗の所在地を管轄する保健所が窓口です。千葉県内でも窓口は一つではなく、千葉市・船橋市・柏市は市の保健所、それ以外の市町村は県の保健所(健康福祉センター)に分かれます。業種は令和3年6月1日から再編された32業種のうちの「飲食店営業」で、申請そのものは国の食品衛生申請等システムで電子申請できます。

ただし、電子申請で全部が終わるわけではありません。この記事の結論は、電子申請で減らせるのは「書類を窓口に持って行く回数」だけで、工事着工前の事前相談、施設検査、許可証の受け取りは今も窓口と現地で行う、という点です。この3つは保健所ごとに運用が違い、とくに手数料の納め方は千葉県の保健所と千葉市保健所で別物です。

この記事は、制度の意味やメリットの解説ではなく、千葉県で飲食店を出す人が「どこに、何を、どの順番で出すか」を決められるようにするために書きました。電子申請の対象になるケースとならないケース、必要書類、手数料、HACCPと食品衛生責任者、そして営業許可の外側にある届出までを、一次資料の範囲で整理します。

なお、本記事の内容は千葉県・千葉市・厚生労働省の公表資料に基づく一般的な説明です。実際の運用は保健所ごとに異なるため、最終的な判断は管轄の保健所の案内に従ってください。

飲食店の営業許可が必要になる業態

飲食店営業とはどんな営業か

飲食店営業の定義は、千葉県の営業許可業種一覧では「食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業」とされています。ここでいう「調理」は、単に温めることではありません。その場で客に飲食させるか、短期間のうちに消費されることを前提として、一応摂食しうる状態に近くなった食品を変形したり、他の食品を附加したり、調味を加えたりして、飲食に最も適するように加工成形することを指します。

この定義に当てはまるかどうかは、店名や業態の呼び方では決まりません。カフェ、居酒屋、ラーメン店、弁当のイートイン、キッチンカーでの調理販売は、いずれも飲食店営業の検討対象になります。一方で、既製品を仕入れてそのまま売るだけ、といった形は別の扱いになることがあります。許可申請の全体像と行政書士の関わり方は飲食店営業許可の取得方法にまとめているので、ここでは「電子申請」に絞って進めます。

32業種のうちのどれに当たるか

営業許可が必要な業種は、食品衛生法施行令第35条に規定される32業種です。令和3年6月1日の食品衛生法改正で、それまでの34業種が32業種に再編されました。単に数を減らしたのではなく、リスクに応じて許可から届出に移った業種(乳類販売業、氷雪販売業など)がある一方、新たに許可業種になったもの(漬物製造業、水産製品製造業、液卵製造業、食品の小分け業など)もあります。

再編の考え方として押さえておきたいのは、「原則、一施設一許可」という方向です。一つの許可業種で取り扱える食品の範囲が広がり、たとえば菓子製造業の許可を持っている施設が調理パンを製造する場合、そうざい製造業や飲食店営業の許可は不要になりました。逆に言えば、飲食店として提供するだけでなく同じ施設で菓子を製造して販売するなら、飲食店営業とは別に菓子製造業の許可が要ります。「飲食店だから飲食店営業だけ」とは限らない、という点が最初の分岐です。

営業の内容必要な許可・届出補足
食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる飲食店営業の許可店内飲食が基本。調理の定義に当たるかで判断
既製品の開封・加温・盛り付け、半製品の簡易調理など飲食店営業の許可(簡易な営業)取扱品目が限定される代わりに施設基準が一部緩和
同じ施設で菓子・そうざい等を製造して販売する飲食店営業+製造業の許可製造する品目ごとに別業種の許可が必要
許可対象外だが届出が必要な業種(温度管理が必要な包装食品の販売、冷凍・冷蔵倉庫業など)営業届出(法第57条)施設基準も更新も不要。飲食店営業は許可業種なので対象外
表1 飲食店の営業内容と必要な許可・届出の区分

「簡易な営業」に当たるかどうか

飲食店営業のうち、調理の度合いが小さいものは「簡易な営業」として扱われ、取扱品目が制限される代わりに施設基準の一部が緩和されます。千葉県が具体例として挙げているのは、次の4区分です。

  • 既製品(そのまま喫食可能な食品)を開封、加温、盛り付け等して提供する営業(そうざい、ハム、ソーセージ、缶詰、おでん等)
  • 半製品を簡易な最終調理(揚げる、焼く等)で提供する営業(唐揚げ、フライドポテト、ソフトクリーム等)
  • 米飯を炊飯する営業、冷凍パン生地を焼成する営業
  • 既製品の飲料(清涼飲料水、アルコール飲料等)と、自家製のジュース・コーヒー等を提供する営業

居抜き物件での開業や、テイクアウト中心の小さな店舗では、この区分に当たるかどうかで内装の要件が変わります。図面を引く前に、自分の営業がどの区分になるかを保健所に確認しておくと、後からの作り直しを避けられます。

保健所の管轄|千葉県と千葉市で窓口が違う

窓口は施設の所在地で決まる

営業許可の申請先は、本社の所在地でも、代表者の住所でもありません。営業施設の所在地を管轄する保健所です。千葉県の案内でも「お手続き窓口は営業施設の所在地を管轄する保健所となります」と明記されています。

ここで注意が必要なのは、千葉県内の保健所はすべて県の機関ではないという点です。千葉市は政令指定都市、船橋市と柏市は中核市で、それぞれが自らの保健所を持ち、千葉県とは別組織として食品営業許可の事務を行っています。市川市・浦安市は県の市川保健所の管轄で、市川市が独自の保健所を持っているわけではありません。「千葉市だから千葉県の手続きと同じ」とはならない、というのが実務で最初につまずくところです。

保健所管轄地域/電話
保健所管轄地域
電話
習志野保健所習志野市・八千代市・鎌ケ谷市
047-475-5154
市川保健所市川市・浦安市
047-377-1103
松戸保健所松戸市・流山市・我孫子市
047-361-2139
野田保健所野田市
04-7124-8155
印旛保健所(本所)佐倉市・四街道市・八街市・印西市・酒々井町・白井市・栄町
043-483-1137
印旛保健所(成田支所)成田市・富里市
0476-26-7231
香取保健所香取市・神崎町・多古町・東庄町
0478-52-9161
海匝保健所(本所)銚子市
0479-22-0206
海匝保健所(八日市場地域保健センター)旭市・匝瑳市
0479-72-1281
山武保健所東金市・山武市・大網白里市・九十九里町・芝山町・横芝光町
0475-54-0611
長生保健所茂原市・一宮町・睦沢町・長生村・白子町・長柄町・長南町
0475-22-5166
夷隅保健所勝浦市・いすみ市・大多喜町・御宿町
0470-73-0145
安房保健所(本所)館山市・南房総市・鋸南町
0470-22-4511
安房保健所(鴨川地域保健センター)鴨川市
0470-92-4511
君津保健所木更津市・君津市・富津市・袖ケ浦市
0438-22-3752
市原保健所市原市
0436-21-6391
千葉市保健所千葉市
043-238-9934
船橋市保健所船橋市
047-409-2594
柏市保健所柏市
04-7167-1259
表2 千葉県内の保健所と管轄地域(千葉市・船橋市・柏市は市の保健所)

千葉市保健所の窓口

千葉市の場合、申請窓口は食品安全課食品指導班(千葉市中央区問屋町1番35号 千葉ポートサイドタワー12階、電話043-238-9934)で、受付は平日9時から17時までです。施設検査は月・水・木に行われ、検査時間は前日(土日祝・年末年始を除く)の午後3時から4時の間に電話で確認する運用になっています。

同じ千葉県内でも、様式の番号、手数料の納め方、検査の曜日、許可証の受け取り方が違います。まず住所で窓口を確定させ、その保健所の案内を読む。順番を逆にすると、書類を作り直すことになります。

許可までの流れ

飲食店営業の許可は、申請書を出せば下りるものではありません。大まかに事前相談 → 施設整備 → 申請 → 施設検査 → 許可証交付の5段階で、電子申請を選んでもこの順番は変わりません。千葉県の案内では、事前相談は必ず建築・改修工事の着工前に行うよう明記されています。

1 事前相談(着工前)

管轄の保健所に、必要な許可業種と施設基準を確認します。持参するのは、設備器具等の位置を記載した図面(手書き可)と、施設の現状が分かる写真です。内装業者に図面を描いてもらう前に相談すると、区画の位置や手洗いの数をその場で修正できます。工事が進んでから「作業場が区画されていない」「手洗いの水栓が手で触る構造になっている」と分かると、検査で合格できず、開店日が動きます。

2 施設整備と水質検査

施設は千葉県食品衛生法施行条例で定める施設基準に合わせます。基準は各業種に共通する基準と業種別の基準の両方を満たす必要があり、飲食店営業では作業場の区画、床・内壁・天井の材質、ねずみや昆虫の侵入防止設備、手指の再汚染を防ぐ構造の手洗い設備、冷蔵庫の温度計、ふた付きの廃棄物容器などが確認されます。

水道水以外の水(井戸水など)を作業場や従業員トイレの手洗いで使う場合は、水質検査を受け、基準に適合した成績書を添付します。千葉県の案内では直近1年以内の検査結果が必要で、写しでの提出も可能です。必要に応じて塩素滅菌装置を設置し、残留塩素濃度0.1mg/L以上を確保します。

3 申請

申請書と図面、水質検査の成績書、手数料を管轄の保健所に提出します。この段階で電子申請を使うか、書面で出すかを選びます。書類がそろっていれば、窓口ではその場で書類審査が行われ、申請書が受理されます。

4 施設検査

保健所の担当者が施設を訪れ、構造設備が基準に合っているかを確認します。千葉市では、検査の際に営業者が立ち会うことが求められ、施設基準に合致していない場合や施設が未完成の場合は許可されません。検査日は申請の受理後に決まるため、申請が遅れると検査日も後ろにずれます。

5 許可証の交付

検査に合格すると、食品営業許可通知書と許可証の交付日時が知らされます。千葉市の場合、許可証は検査合格後、翌々開庁日の9時以降に保健所の窓口で交付され、郵送による交付は行っていません。申請から許可までにかかる期間は通常2週間前後、繁忙期は申請の受理から施設検査まで2週間程度かかると案内されています。

この流れを見ると分かるように、電子申請は3番目の工程を軽くするだけで、1・4・5は残ります。開店日から逆算するときは、事前相談の予約を起点にしてください。

電子申請でできること・できないこと

使うシステムは「食品衛生申請等システム」

飲食店営業の電子申請に使うのは、千葉県の独自システムではなく、厚生労働省の「食品衛生申請等システム」です。システムからは、営業許可申請、営業届出、食品等の自主回収(リコール)報告ができ、令和8年4月1日からは機能性表示食品等に係る健康被害の情報提供も加わりました。許可申請では、新規だけでなく継続(更新)申請も扱えます。

「食品衛生申請等システム」と名前が似ているものに、千葉県の「ちば電子申請サービス」があります。これは県や市町村の各種手続をオンラインで申請・納付する共通の窓口で、食品営業許可の申請は前者、手数料の納付は後者、という分担になっています。ここを混同すると、「ちば電子申請サービスを開いたが飲食店営業の申請メニューがない」という状態になります。

電子申請が使えるのは令和3年6月1日以降の許可

電子申請を利用できるのは、令和3年6月1日以降に取得する許可についてです。船橋市の案内では、令和3年6月1日以降に取得する許可の申請(現に受けている許可の期限満了に伴う申請を含む)と、令和3年6月1日以降に取得した許可に対する変更・廃止等の届出が対象とされています。令和3年5月31日以前に取得した許可は、窓口での書面申請になります。

ここに、業種再編の影響が重なります。改正前に許可を受けていた施設が、令和3年6月1日以降に初めて迎える許可期限の満了に伴って申請する場合は、継続ではなく新規申請として扱われます。長く営業している店ほど「更新のつもりで出したら新規扱いだった」となりやすいので、許可証の期限と業種名を先に確認しておいてください。

アカウントは2通り

システムを使うにはアカウントが必要です。すでにGビズIDを持っている事業者はGビズIDで利用でき、持っていない場合はシステム独自のアカウントを作成します。どちらの場合も、法人は法人番号、個人事業主は氏名・住所などの入力が前提になります。

食品衛生責任者の情報もここで入力します。千葉市の案内では、食品衛生責任者養成講習会の受講修了者は、取得自治体名と取得年月日の記載が必要です。手元に修了証がないまま申請を進めると、入力の途中で止まります。

電子申請で終わらない3つ

電子申請にしても、次の3つは残ります。

  1. 事前相談:図面と写真を持って保健所へ。着工前なので、オンラインでは代替できません。
  2. 施設検査:保健所の担当者が現地を確認します。営業者の立ち会いが必要です。
  3. 許可証の交付:千葉市では窓口交付のみで、郵送は行っていません。

さらに手数料があります。ここが千葉県の保健所と千葉市保健所で最も大きく違う部分です。

千葉県と千葉市で違う「手数料の払い方」

千葉県の保健所では、手数料は千葉県収入証紙もしくはオンライン決済で納付します。オンライン決済は令和8年4月から、食品衛生申請等システムで電子申請した新規申請・継続申請の手数料について、ちば電子申請サービスを使って一部の保健所で可能になりました。使える支払方法はクレジットカード(VISA、Master、JCB、AMEX、Diners)、スマートフォン決済アプリ(PayPay、d払い、auPAY)、Pay-easyです。

一方、千葉市保健所では、手数料は現金を持参します。電子申請をした場合でも、申請の受理後に窓口へ持って行く必要があると案内されています。「電子申請にしたからキャッシュレスで完結する」とは限らない、という分かりやすい例です。納付した手数料は、千葉市衛生関係手数料条例第4条により還付されません。

項目食品衛生申請等システム(電子申請)窓口(書面)
使えるケース令和3年6月1日以降の許可すべて(令和3年5月31日以前の許可はこちら)
申請書の提出オンライン保健所の窓口へ持参
事前相談必要(着工前・対面)必要(着工前・対面)
施設検査必要(現地・立会い)必要(現地・立会い)
手数料(千葉県)収入証紙、またはちば電子申請サービスでオンライン決済収入証紙
手数料(千葉市)現金を窓口へ持参現金を窓口へ持参
許可証の受け取り窓口交付(千葉市は郵送不可)窓口交付
表3 電子申請と窓口申請の違い

期限が近いときは電子申請を選ばない

千葉県は継続申請の案内で、オンライン申請・オンライン決済の場合は手続き完了までに時間を要することがあり、期間に余裕を持って手続きするよう注意を促しています。そして許可期限の満了が間近な場合は、書面で申請するよう明記しています。更新の時期が迫っている店は、電子申請の便利さより確実さを優先したほうが安全です。

電子申請の考え方そのものは、業種を問わず共通します。建設業許可でJCIPを使う場合の準備とつまずきどころは建設業許可の電子申請にまとめているので、「行政のオンライン申請に何を用意するか」を知りたいときはそちらも参考にしてください。

必要書類

飲食店営業の新規申請でそろえるものは、多くありません。千葉県と千葉市の案内を突き合わせると、申請書、施設の図面、水質検査の成績書(該当する場合)、手数料の4点が基本です。千葉県と千葉市が公表している新規申請の必要書類に、資格証明書の添付は挙げられていません。申請書の所定欄に氏名・資格・取得年月日を記載します。

書類内容・注意点(原本か写し)
営業許可申請書【原本】様式番号は保健所ごとに異なる(千葉市は様式第7号・1枚両面)。法人は法人番号、食品衛生責任者の氏名・資格・取得年月日を記載
施設の構造及び設備を示す図面【原本】特定の様式はなく手書きも可。設計図を複写する場合は設備の配置を追記
水質検査の成績書【写し可】水道水以外の水を作業場・従業員トイレの手洗いで使う場合。直近1年以内
申請手数料飲食店営業は新規16,000円(千葉県・千葉市とも)
現在の許可証【原本】継続(更新)申請のとき。必要かどうかは保健所の案内で確認(船橋市は必要)
表4 飲食店営業の申請でそろえる書類

見落としやすいのが、控えの扱いです。千葉市では、一度受理した書類は返却されず、保健所でコピーを取ることもできません。控えが必要な場合は、持参する前に自分でコピーを取っておきます。図面は検査の場でも確認されるので、手元に同じものが残っている状態が望ましいです。

申請書の書き方で迷いやすいのは、営業の種類の選び方と食品衛生責任者の欄です。複数の業種にまたがる営業(店内飲食と菓子の製造販売など)をする場合は、申請の前に保健所で業種の整理を済ませてください。申請後の業種の変更は、原則として認められません。

手数料と納付

手数料の額は条例で定められており、業種と新規・継続で変わります。千葉県の手数料一覧(令和3年6月1日現在)と千葉市の手数料表では、飲食店営業は同じ額です。

業種手数料(新規/継続)
飲食店営業16,000円
11,200円
調理の機能を有する自動販売機により食品を調理し、販売する営業9,600円
6,700円
食肉販売業9,600円
6,700円
魚介類販売業9,600円
6,700円
菓子製造業14,000円
9,800円
そうざい製造業21,000円
14,700円
表5 主な業種の申請手数料(千葉県・千葉市)

納付方法は3つ。ただし使える窓口が違う

納付方法は、収入証紙、オンライン決済(ちば電子申請サービス)、窓口での現金の3つです。どの方法が使えるかは、管轄の保健所によって変わります。

  • 千葉県収入証紙:保健所や市役所等で購入して申請書に貼付。必要な額面を組み合わせる
  • オンライン決済:令和8年4月から、食品衛生申請等システムで申請した新規・継続の手数料を、ちば電子申請サービスで納付(一部保健所)
  • 窓口での現金:千葉市ではこの方法。電子申請でも受理後に持参する

収入証紙は、購入後に他の額面へ交換できず、返還して現金の還付を受けることもできません。必要な額面と枚数を確認してから購入します。

さらに、収入証紙の制度そのものが終わろうとしています。千葉県は利便性向上と事務効率化のため収入証紙制度を廃止し、キャッシュレス決済など他の納付手段へ移行するとしており、販売終了は令和8年12月末日、利用終了は令和9年12月末日、未利用証紙の返還・還付期限は令和13年12月末日(予定)と公表しています。開業が令和9年以降になる場合は、証紙を前提にせず、窓口で最新の納付方法を確認してください。

有効期間は「5年」とは限らない

営業許可には有効期間があり、更新が必要です。ここでよくある誤解が「有効期間は5年で一律」というものですが、法律の書き方は違います。食品衛生法第55条第3項は「都道府県知事は、許可に5年を下らない有効期間その他の必要な条件を付けることができる」としており、5年は下限です。

実際の年数は、施設の構造と設備を査定して決まります。厚生労働省の資料でも、判断項目の達成数に応じて許可年数を決め、5年から8年に設定している自治体が多いとされています。千葉県内でも、千葉県食品衛生法施行条例第3条の施設基準をもとに、建物の構造、天井・内壁・床の材質、給水、便所など12項目の適合数で5年(0〜3項目)から8年(10〜12項目)までを決める運用が採られています(船橋市の要領)。

つまり、内装にお金をかけて材質を基準に合わせると、更新の間隔が長くなります。自分の許可が何年なのかは、交付された許可証に記載された有効期限で確認してください。

更新の時期

千葉県の継続申請の案内では、許可期限が満了する当月中に、必要書類と手数料を管轄の保健所へ提出します。また、許可期限の満了前に現地施設調査が行われます。更新は「同じ内容なら書類審査だけで済む」と考えられがちですが、施設の老朽化や改造がある場合は実地の確認が必要になります。

HACCPと食品衛生責任者

HACCPに沿った衛生管理は開業前から

令和3年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務づけられました。根拠は食品衛生法第51条で、第1項第1号が施設の内外の清潔保持、ねずみ及び昆虫の駆除その他一般的な衛生管理、第1項第2号が食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組(HACCPに基づく衛生管理)です。

飲食店営業では、7原則12手順の計画書を一から作るのではなく、厚生労働省と千葉県が用意した飲食店向けの手引に沿って「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に取り組む形が基本です。千葉県も飲食店向けのリーフレットを用意しており、施設ごとに衛生管理計画を作成し、衛生管理の状況を記録・保存することが求められます。必要に応じて手順書(作業マニュアル)を作成し、計画と手順書を見直します。

ここは許可を取ってから考えるのではなく、開業前から始まる項目です。営業許可の取得後に、一般的な衛生管理とHACCPに沿った衛生管理の基準に従って、施設ごとの衛生管理計画を作成し、記録・保存を始める。これが開業後の最初の実務になります。

食品衛生責任者を決める

食品衛生責任者の設置は、食品衛生法施行規則別表第17第1号に規定されています。営業許可または営業届出の対象となる営業を行う者は、施設ごとに食品衛生責任者を定め、申請書または届出書に氏名等を記載して保健所に提出します。

千葉県が示す資格要件は次のとおりです。

  • 食品衛生監視員、食品衛生管理者の資格要件を満たす者
  • 調理師、製菓衛生師、栄養士、船舶料理士、食鳥処理衛生管理者など
  • 公益社団法人千葉県食品衛生協会が実施する食品衛生指導員養成講習会の修了者
  • 千葉県知事が行う、または適正と認める食品衛生責任者養成講習会の修了者

資格がない場合は、食品衛生責任者養成講習会を受講します。千葉県ではこの講習会を公益社団法人千葉県食品衛生協会に委託して実施しており、開催日程と申込みは協会の各支所が担当しています。

以前は保健所が交付する「食品衛生責任者票」を施設に掲示する運用がありましたが、千葉県食品衛生責任者制度要綱が廃止され、令和3年6月から保健所での責任者票の発行業務がなくなり、施設内への掲示も義務ではなくなりました。責任者を定める義務そのものは残っていますので、交代したときは変更届を出します。

開業前に必要な他の届出

飲食店営業の許可を取っても、それだけで開業できるわけではありません。営業の内容によって、保健所の外の窓口への手続きが発生します。

深夜にお酒を出すなら

午前0時から午前6時までの時間に酒類を提供する飲食店は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)第33条に基づく深夜酒類提供飲食店営業開始届を、営業所ごとに所在地を管轄する公安委員会へ提出します。許可ではなく届出ですが、営業所の構造・設備の概要や営業の方法を記載した書類が必要で、届出をしないまま深夜営業をすると無届営業になります。手続きの詳細は深夜酒類提供飲食店営業の届出にまとめています。

接待を伴うなら

客に接待をして飲食させる営業は、飲食店営業ではなく風俗営業の許可の対象になります。同じ「飲食店」でも、接待の有無、店内の照度、客席の区画によって必要な許可が変わるため、物件契約の前に業態を確定させる必要があります。千葉県での風俗営業許可の流れは風俗営業許可の申請を参照してください。

消防への届出

建物や建物の一部をこれから使用するときは、防火対象物使用開始届を提出します。千葉市では根拠が千葉市火災予防条例第43条で、使用開始する7日前までに、千葉市消防局予防部指導課(千葉市中央区長洲1丁目2番1号 セーフティーちば4階)へ出します。届出書2部(正本・副本)の持参のほか、ちば電子申請サービス(千葉市)での電子申請もできます。

収容人員が30人以上の場合は、消防法第8条に基づく防火管理者の選任と消防署への届出も必要です。飲食店はテナントとして入居することが多く、建物全体の防火管理との関係もあるため、内装工事の前後に消防署へ一度相談しておくと食い違いを防げます。

業態ごとの開業準備

居酒屋やスナックのように、酒類の提供と深夜営業が絡む業態は、保健所・警察・消防の3か所に手続きが分かれます。開業準備の全体像は居酒屋開業に必要な許可とスナック開業の許可で整理しているので、自分の業態に近いほうを先に読むと、必要な届出の抜け漏れが減ります。

よくある質問

千葉市と千葉県で、手続きは違いますか

違います。千葉市は政令指定都市として独自の保健所を持ち、千葉県とは別の窓口・様式・納付方法で運用しています。千葉市では手数料を現金で持参しますが、千葉県の保健所では収入証紙、または一部の保健所でオンライン決済です。船橋市と柏市も市の保健所です。まず施設の住所で管轄を確認してください。

電子申請だけで許可まで終わりますか

終わりません。電子申請で軽くなるのは申請書の提出で、着工前の事前相談、現地での施設検査、許可証の受け取りは残ります。千葉市では許可証は窓口交付のみで、郵送は行っていません。

申請はいつまでに出せばよいですか

千葉市では、希望する施設検査日の2週間位前までに申請するよう案内されています。申請から許可までは通常2週間前後、繁忙期は受理から検査まで2週間程度かかります。内装工事の完了日が読めない場合は、余裕を持った日程で相談してください。

手数料はカードで払えますか

千葉県の保健所では、令和8年4月から一部の保健所で、ちば電子申請サービスによるオンライン決済(クレジットカード、スマートフォン決済アプリ、Pay-easy)が使えます。千葉市では現金を持参します。使える方法は管轄の保健所に確認してください。

許可の有効期間は5年ですか

5年とは限りません。食品衛生法第55条第3項は「5年を下らない有効期間」としており、施設の構造・設備の査定によって5年から8年の範囲で決まります。実際の期限は交付された許可証に記載されています。

まとめ

飲食店の営業許可は、施設の所在地を管轄する保健所が窓口です。千葉県内では千葉市・船橋市・柏市が市の保健所、それ以外は県の保健所(健康福祉センター)になります。業種は食品衛生法施行令第35条の32業種のうち「飲食店営業」で、同じ施設で製造もするなら別業種の許可が必要です。

電子申請は食品衛生申請等システムで、令和3年6月1日以降の許可が対象です。手数料の納付は別の話で、千葉県は収入証紙またはちば電子申請サービス(令和8年4月から一部保健所)、千葉市は現金持参です。収入証紙は令和8年12月末で販売終了、令和9年12月末で利用終了となる予定なので、開業時期によっては納付方法が変わります。

押さえる順番は、住所で窓口を決める → 業態と業種を確認する → 着工前に事前相談 → 施設を整える → 申請 → 検査 → 許可証です。電子申請はこの流れの一部を軽くするもので、順番そのものは変わりません。開店日が決まっている場合は、申請日ではなく事前相談の日から逆算してください。

参考資料