「一人では現場を回しきれなくなった」「仕事が増えたので、初めて職人を採用したい」
千葉県で建設業を営む方にとって、初めての雇用は事業を成長させる大きな一歩です。一方、人を雇うと、給与の支払いだけでなく、労働条件の明示、保険の加入、安全管理など、事業主として対応すべきことが増えます。
特に建設業では、元請・下請の関係や、工事現場と事務所で異なる労災保険の扱いに注意が必要です。この記事では、初めて従業員を雇う際の準備と、千葉県・市町村ごとに確認したい事項を解説します。
※2026年9月28日時点で確認した情報に基づきます。
1.一人目の採用でも、雇用主としての準備が必要
「従業員が一人だけだから」「知り合いに手伝ってもらうだけだから」という理由で、労務管理が不要になるわけではありません。正社員だけでなく、パートやアルバイトも、働き方に応じて労働関係法令や保険制度の対象になります。
採用前には、任せる仕事、勤務日数、給与、必要な資格を整理しましょう。人件費も給与額だけで考えず、会社負担の保険料、健康診断、作業服、保護具、教育費などを含めて見積もることが大切です。
また、日当払いだから外注扱いになるわけではありません。雇用か請負かは、契約書の名称だけでなく、仕事の指示や時間管理などの実態から判断されます。「一人親方として扱えば保険は不要」と安易に決めないようにしましょう。
2.労働条件を明確にし、書面で伝える
雇用契約を結ぶ際は、賃金や労働時間などの労働条件を明示する必要があります。重要な事項は原則として書面で交付するため、労働条件通知書や、必要事項を記載した雇用契約書を準備しましょう。
主に確認するのは、契約期間、就業場所、仕事内容、始業・終業時刻、休憩、休日、賃金の計算方法・締切日・支払日、退職に関する事項などです。
2024年4月からは、就業場所と業務について「変更の範囲」の明示も必要になりました。有期契約では更新上限など、契約内容に応じて追加事項があります。[1]
建設業では「千葉県内の現場が中心だが、東京都や茨城県の現場もある」「会社に集合してから移動する」といった働き方も具体的に伝えましょう。
雨天時の対応や、現場がない日の扱いも確認事項です。日給制であっても、会社都合の休業に当たる場合には休業手当が問題になるため、「作業をしなければ必ず無給」とは限りません。
3.労災保険は「現場」と「事務所等」を分けて確認
労災保険は、仕事中や通勤中のけがなどを補償する制度です。建設業で労働者を一人でも雇う場合、原則として適用対象になります。
ただし、建設工事では、原則として元請事業主が下請の労働者も含めて現場の労災保険を成立させます。下請会社の従業員が現場で働く場合は、その工事の保険関係を確認する必要があります。
一方、事務所での事務作業や、特定の工事現場に付随しない資材置場での整理などは、現場の労災保険とは別に「事務所等労災」の成立が必要になる場合があります。[2]
「元請が加入しているから、自社では何も確認しなくてよい」と考えるのは危険です。採用する人が、どこで、どのような仕事をするのかを整理して、労働基準監督署に確認しましょう。
建設業は原則として、労災保険と雇用保険の保険関係を別々に扱う「二元適用事業」です。一般的な事務所向けの手続き案内を、そのまま当てはめないことが大切です。[3]
4.雇用保険は勤務時間と雇用見込みを確認
雇用保険は、原則として「週の所定労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用見込みがある」という両方の要件を満たす従業員が加入対象です。昼間学生などには例外があります。
正社員かアルバイトかという名称や、本人の加入希望だけで決める制度ではありません。試用期間中でも、要件を満たせば加入手続きが必要です。[4]
初めて対象者を雇う場合は、事業所の設置に関する届出と、本人の資格取得に関する届出などを行います。主な期限は次のとおりです。
| 手続き | 原則的な期限 |
|---|---|
| 労働保険の保険関係成立届 | 成立日の翌日から10日以内 |
| 労働保険の概算保険料の申告・納付 | 成立日の翌日から50日以内 |
| 雇用保険適用事業所設置届 | 設置日の翌日から10日以内 |
| 雇用保険被保険者資格取得届 | 資格取得の事実があった日の翌月10日まで |
建設業の雇用保険側の成立届などは、管轄のハローワークへ提出します。すでに成立済みの保険関係がある場合や工事の形態によって必要な手続きが変わるため、採用前に確認すると安心です。[3]
5.健康保険・厚生年金は、法人と個人事業で異なる
健康保険・厚生年金の加入は、事業所が法人か個人事業かによって扱いが異なります。
法人の事業所は原則として強制適用です。加入要件を満たす従業員を採用した場合は、資格取得の手続きを行います。「一人目の採用だから、まだ加入しなくてよい」という判断はできません。
個人事業の建設業では、常時5人以上の従業員を使用する場合、原則として強制適用になります。5人未満で強制適用に当たらない場合でも、一定の条件で任意適用を受ける方法があります。[5]
加入対象者の資格取得届は、原則として事実発生から5日以内に提出します。短時間勤務の人については、勤務時間・日数などから個別に判断します。
建設国保などの国民健康保険組合に加入している場合も、厚生年金への加入とは分けて確認が必要です。健康保険の適用除外承認が必要になるケースもあるため、年金事務所と加入先の組合に確認しましょう。
6.給与・残業・有給休暇の管理を始める
給与を決める際は、千葉県最低賃金を確認します。千葉労働局の公表では、2026年10月1日から時間額1,195円に改定されます。採用日だけでなく、実際に働いた日に適用される金額で確認しましょう。[6]
日給制・月給制でも、時間額に換算して最低賃金を下回っていないか確認が必要です。通勤手当や時間外割増賃金など、最低賃金との比較に含めない賃金もあります。
労働時間は原則として1日8時間、週40時間です。法定時間外労働や法定休日労働をさせる場合は、事前の36協定の締結・届出と、適切な割増賃金の支払いが必要になります。
建設業にも2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、原則は月45時間・年360時間です。「繁忙期だから」「従業員が了承しているから」と無制限に残業させることはできません。[7]
また、会社から現場への移動時間は、一律に勤務時間外と扱えるものではありません。会社の指示や移動中の業務など、実態に沿って判断します。
出勤簿などの勤怠記録、労働者名簿、賃金台帳を整え、有給休暇も管理しましょう。原則として入社から6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した人には、勤務日数などに応じた有給休暇が発生します。常時10人以上の事業場では就業規則の作成・届出が必要ですが、少人数でも社内ルールを整理しておくとトラブル予防につながります。[8]
7.現場に入る前に、安全教育と健康管理を行う
建設業では、採用手続きと同時に安全管理の準備も欠かせません。
雇入れ時には、担当業務に応じた安全衛生教育を行います。経験者を採用した場合も、自社の作業手順、保護具の使用方法、事故時の連絡先などを共有しましょう。作業によっては、資格、技能講習、特別教育などが必要です。
常時使用する労働者には、原則として雇入れ時と年1回の定期健康診断が必要です。粉じんなどの有害業務では、別途、特殊健康診断等の対象となる場合もあります。[9]
また、一定の暑熱作業では、熱中症の報告体制や緊急時の対応手順の整備・周知が義務付けられています。飲み物を用意するだけでなく、体調不良を申告しやすい現場づくりも進めましょう。[10]
8.千葉県・市町村によって何が違う?
労働条件の明示、労働保険、社会保険、36協定などの基本的なルールは国の制度です。千葉市・船橋市・市原市など、市町村が変わるだけで加入基準や法定労働時間が変わるものではありません。
地域ごとに確認したいのは、次の事項です。
| 項目 | 地域との関係・確認先 |
|---|---|
| 地域別最低賃金 | 千葉県内では県の地域別最低賃金を確認。県外勤務がある場合は適用関係を確認 |
| 労働保険・社会保険 | 所在地などに応じて管轄の監督署、ハローワーク、年金事務所が異なる |
| 個人住民税 | 従業員の住所地の市町村に、特別徴収などの手続きを確認 |
| 自治体の支援制度 | 所在地の県・市町村ごとに、対象者・募集期間・予算を確認 |
給与支払いを始める際は、源泉徴収の準備に加え、給与支払事務所等の開設届の提出要否も確認します。新たに開設した場合の提出期限は原則1か月以内です。[11]
個人住民税は原則として給与からの特別徴収ですが、千葉県の案内では、一定の除外対象者を除いた総従業員数が2人以下の事業所などについて、所定の手続きで普通徴収が認められる場合があります。「一人だけなら自動的に対象外」とせず、従業員の住所地の市町村へ確認しましょう。[12]
助成金や自治体の支援制度も、採用前の申請・計画提出が条件となることがあります。利用を考えている場合は、募集や雇入れを進める前に確認することが大切です。
9.初めての雇用は、採用前の準備から
最初の従業員を迎える際は、労働条件を決め、必要な保険手続きを整理し、給与計算と安全管理の体制を整えることが基本です。
建設業では、工事現場と事務所等の労災保険、元請・下請の関係など、業界特有の確認事項があります。入社日が決まってから慌てないよう、求人を出す段階から準備を進めましょう。
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