「民間工事だけでなく、公共工事にも挑戦したい」
「建設業許可はあるけれど、経審はまだ受けていない」
「毎年申請しているが、制度改正で何が変わったのか知りたい」

公共工事への参入を考える建設業者にとって、経営事項審査、いわゆる「経審」は重要な手続きです。

ただし、経審を受けるだけで入札に参加できるわけではありません。建設業許可、経審、入札参加資格の関係を理解し、希望する発注機関の申請時期に合わせて準備する必要があります。

この記事では、千葉県知事許可業者の手続きを中心に、経審の基本、申請の流れ、評価項目、2026年7月の改正内容を解説します。

経営事項審査はどのような場合に必要か

経営事項審査は、法律で定められた公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が受ける、経営に関する客観的な審査です。

建設業許可を持つすべての事業者に、一律に義務付けられているわけではありません。

民間工事のみを行う場合や、公共工事に下請として関わるだけの場合は、そのことだけを理由に経審の受審義務が生じるわけではありません。まずは「誰から、どの業種の工事を、元請として受注したいか」を整理しましょう。

なお、経審を受けるには建設業許可が必要です。希望する工事に対応する許可業種と、受審する業種の確認から始めます。

建設業許可・経審・入札参加資格の違い

公共工事への参入では、次の3つを区別することが大切です。

手続き主な役割
建設業許可建設業を営むために必要となる許可
経営事項審査経営規模や財務状況、技術力などを客観的に評価する審査
入札参加資格審査各発注機関の入札に参加するための資格審査

経審の結果は、入札参加資格審査の資料として使われます。しかし、経審を受けただけで、千葉県や県内市町村の入札参加資格が自動的に取得できるわけではありません。

また、発注機関の格付けは、経審の点数だけで決まるとは限りません。工事成績などの独自評価が加わる場合があり、実際の入札では、所在地、施工実績、配置技術者などの条件も確認します。

「点数が上がれば必ず受注できる」という制度ではないため、希望する工事の参加条件も併せて調べましょう。

経審の評価項目と総合評定値

経審では、完成工事高や財務内容、技術職員などを評価します。その結果を組み合わせたものが「総合評定値」、通称「P点」です。

区分主な評価内容
X1業種別の完成工事高
X2自己資本額、利払前税引前償却前利益
Y財務諸表などに基づく経営状況
Z業種別の技術職員数、元請完成工事高
W担い手の育成・確保、防災活動、法令遵守、建設機械の保有など

P点の基本的な計算式は、次のとおりです。

P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W

完成工事高は会社全体の売上高と必ずしも同じではなく、兼業事業の売上などと区別して整理します。また、技術職員についても、資格を持っているだけで全員を計上できるとは限りません。対象業種や雇用状況などの要件を確認する必要があります。

2026年7月改正で変わったポイント

2026年7月1日以降の申請から、その他の審査項目、いわゆる社会性等の評価が変更されています。適用の判断は、決算日だけでなく申請日にも注意が必要です。

自主宣言制度の評価が追加

「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無が、新たな評価項目になりました。

加点には、審査基準日が宣言日以降であることや、宣言書・誓約書を提出することなどの条件があります。申請直前に宣言すれば、過去の決算日を基準とする審査でも必ず加点される、という仕組みではありません。

千葉県も、この制度に関する誓約書の様式を公開しています。宣言の内容と必要書類を確認して準備しましょう。

CCUSに関する配点が見直し

建設キャリアアップシステム、通称「CCUS」に関係する、就業履歴の蓄積措置の評価も見直されました。

対象工事で必要な措置を実施した場合の配点は、民間工事を含むすべての建設工事では15点から10点、すべての公共工事では10点から5点に変更されています。

これらはWの算定に用いる審査項目の点数であり、P点がそのまま同じ点数だけ増減するという意味ではありません。

加点対象の建設機械が追加

建設機械の保有状況では、加点対象に「不整地運搬車」と「アスファルト・フィニッシャ」が追加されました。

対象機械を使用している場合は、保有状況や確認書類を見直しておきましょう。

社会保険加入の評価項目が削除

雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況に関する評価項目は、今回の改正で削除されました。

これは、建設業許可の段階で社会保険加入に関する要件が設けられていることを踏まえた見直しです。社会保険への加入義務がなくなったわけではありません。

千葉県で経審を申請する流れ

1.受審する業種と予定を確認する

まず、希望する発注機関と工事の種類を整理します。

そのうえで、必要な許可業種、経審を受ける業種、入札参加資格の受付時期を確認します。継続受審の場合は、現在の経審結果の有効期間も確認してください。

2.決算書類と工事実績を整理する

決算を迎えたら、財務諸表、工事経歴書、完成工事高などを整理し、必要な事業年度終了届、いわゆる決算変更届の手続きを進めます。

経審では、工事の業種区分や元請・下請の区分などが評価に関係します。税務申告用の決算書だけでなく、契約書や請求書などと照合できる形で資料を準備しましょう。

3.登録経営状況分析機関に申請する

経営状況分析は、国土交通大臣の登録を受けた分析機関が行います。

財務諸表などを提出して分析を受け、経営状況分析結果通知書を取得します。決算変更届の準備と分析申請の準備は、資料の整合性を確認しながら進めることが大切です。

4.経営規模等評価を申請し、P点を請求する

千葉県知事許可業者は千葉県へ申請します。国土交通大臣許可業者は申請先が異なるため、大臣許可業者向けの案内を確認してください。

総合評定値の請求は制度上任意ですが、多くの発注機関が入札参加資格審査で求めています。公共工事への参入を目的とする場合は、経営規模等評価の申請と併せて請求することが基本です。

5.結果通知を確認し、入札参加資格の手続きへ進む

結果通知を受け取ったら、受審業種や内容を確認します。

その後、希望する発注機関の案内に沿って入札参加資格の申請を進めます。経審の申請時期だけでなく、入札参加資格の受付期間にも間に合うよう予定を組みましょう。

千葉県の申請方法は郵送または電子申請

千葉県知事許可業者の経審は、郵送のほか、建設業許可・経営事項審査電子申請システム「JCIP」を利用して申請できます。

以前の会場審査は2022年4月をもって終了しています。古い記事にある「指定された会場へ書類を持参する」という案内を、そのまま現在の手続きに当てはめないようにしましょう。

また、2026年4月1日からは、郵送申請の手数料についても電子納付が始まっています。電子納付とJCIPでの電子申請は別の仕組みなので、利用する申請方法に合った案内を確認してください。

県は、郵送・電子申請それぞれの結果通知書発送予定日も公表しています。必要な時期から逆算し、補正対応の時間も見込んで申請しましょう。

必要書類は申請内容に合わせて確認する

主な申請書類には、経営規模等評価申請書・総合評定値請求書、工事種類別完成工事高、技術職員名簿、その他の審査項目に関する書類などがあります。

これに加えて、経営状況分析の結果や、申告内容を裏付ける確認資料を用意します。

千葉県では、2026年7月改正に対応した説明書と様式が公開されています。特に、社会性等の様式や建設機械の保有状況一覧表などは、前年のファイルをそのまま使わず、現行版かを確認してください。

有効期間は結果通知日からではない

経審で注意したいのが、有効期間の起算点です。

公共工事を直接請け負うための経審結果の有効期間は、原則として審査基準日から1年7か月です。審査基準日は、通常、申請直前の事業年度の終了日となります。

結果通知書を受け取った日から1年7か月使えるわけではありません。

また、入札参加資格者名簿に登載されていても、経審の有効期間が切れれば、それだけで公共工事を継続して直接請け負えるわけではありません。継続受注を目指す場合は、毎年の受審により有効期間に空白を作らないことが大切です。

評点を見直すときは決算前から準備する

経審の準備は、申請書を作り始める時期だけで行うものではありません。

技術職員の資格・雇用状況、工事実績、各種制度への取組などについて、どの時点の状況が評価されるのかを確認しておく必要があります。

まずは、次の点を整理すると取り組みやすくなります。

  • 受注したい工事と受審業種が合っているか
  • 工事の業種区分や元請・下請の区分が正しいか
  • 技術職員について必要な確認資料がそろっているか
  • すでに実施している取組に申告漏れがないか
  • 新たな取組の費用や負担が、自社の事業計画に見合うか

点数だけを目的に設備投資や制度導入を進めるのではなく、受注したい工事と自社の経営方針を踏まえて検討しましょう。

千葉県の経営事項審査はLDパートナーズへご相談ください

経審は、公共工事への参入に向けた準備の一つです。建設業許可、決算変更届、経営状況分析、経審、入札参加資格までを見通して進めることが大切です。

千葉市を拠点とする行政書士法人LDパートナーズでは、建設業者様の許認可や公共工事への参入に関するご相談を承っています。

「初めて経審を受けたい」「毎年の手続きを整理したい」「改正後の評価項目を確認したい」という方は、現在の許可業種や決算月、希望する発注機関などを添えて、お気軽にお問い合わせください。

※本記事は、2026年10月5日時点で確認した国土交通省・千葉県の公表資料に基づき、2026年7月1日施行の改正を反映しています。個別の申請では、申請時点の説明書・様式と各発注機関の案内をご確認ください。

参考資料