相続の手続きは、亡くなってから数日以内に動くもの、3か月・4か月・10か月という期限で動くもの、数年単位で進めるものの3層に分かれます。最初に着手すべきは、死亡届の提出と、被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めて相続人を確定する作業、そして遺言書の有無の確認です。期限のある手続きから先に押さえ、そのうえで財産の把握と遺産分割を進めると、途中でやり直しになりません。
相続が始まったら最初にやること
相続手続きが滞る原因は、たいてい順番の誤りです。相続人が誰か確定していなければ遺産分割協議書は作れず、協議書がなければ不動産の名義変更も預金の払い戻しも動きません。財産の全体像がつかめていなければ、相続税がかかるのかどうかの判断もできません。つまり「相続人」「財産」「遺言」の3つを確定させる作業が、すべての手続きの土台になります。
法制度として最初に来るのは死亡届です。届出義務者は、死亡の事実を知った日から7日以内に、死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかの市区町村へ提出します(戸籍法第86条)。医師の死亡診断書を添え、受理されると埋火葬許可証が交付されます。あわせて住民票の消除と国民健康保険証の返還も、このタイミングで窓口にまとめて出すのが実際的です。
死亡届の前後から、次の4つを並行して動かします。どれも「あとで調べればいい」が通用しないものばかりです。
- 戸籍の収集 被相続人の出生から死亡までの戸籍を集め、相続人を確定します。戸籍は相続人を法的に証明する唯一の資料です。
- 遺言書の捜索 自宅の保管状況の確認に加え、法務局の自筆証書遺言書保管制度、公証役場の公正証書遺言の有無を照会します。
- 財産の把握 預貯金・不動産・有価証券・保険に加え、借入金や未払いの税金まで含めて一覧にします。
- 期限のある届出の洗い出し 年金・健康保険・相続放棄・準確定申告など、数日〜数か月で期限が来るものを先に処理します。
窓口は、不動産なら不動産の所在地を管轄する法務局(千葉県内は千葉地方法務局またはその支局)、相続税なら被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署、戸籍・住民票なら市区町村の窓口と、手続きごとに分かれます。千葉県内でも千葉市・船橋市・柏市は政令市・中核市として独自の窓口を持つため、住所地の自治体の案内を確認してください。
相続人の調査をどこまで自分でやるかは、戸籍の読み方と家族関係の複雑さで決まります。集め方の詳細は相続人調査の流れと手順で、戸籍そのものの取り方は戸籍の各種届出手続きで詳しく扱っています。
相続人を確定する(戸籍の収集)
「長男が全部引き継ぐつもりだった」「親がそう言っていた」という話は、手続きの場面では根拠になりません。相続人を確定できるのは戸籍の連なりだけです。被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍をたどると、婚姻・離婚・認知・養子縁組・転籍の履歴が残り、そこから法律上の相続人が機械的に決まります。
集める書類は、相続登記まで見据えると次のとおりです。用途ごとに必要部数が違うため、戸籍は多めに取得しておくと結果的に安く済みます。
| 書類 | 用途と注意点 |
|---|---|
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍全部事項証明書・除籍全部事項証明書・改製原戸籍謄本 | 相続人を確定する核心。途切れがあると相続関係を証明できない。本籍を転々としている場合は通数が増える |
| 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票) | 最後の住所を確認する。相続税の申告先と登記の管轄を決める基礎になる |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 現在の続柄を証明する。婚姻や養子縁組で本籍が変わっている人は最新のもの |
| 相続人全員の住民票 | 住所の証明。登記申請では住所証明として使う |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 遺産分割協議書と登記申請に必要。発行から3か月以内のものが無難 |
| 固定資産税評価証明書・名寄帳 | 不動産の特定と評価。市町村の資産税課で取得する |
| 登記識別情報(または登記済証)・登記簿謄本 | 登記申請に必要。紛失している場合は別の手続きになる |
戸籍は本籍地に行かなくても取れる(広域交付)
令和6年3月1日から、戸籍証明書・除籍証明書の広域交付が始まりました(戸籍法の一部を改正する法律・令和元年法律第17号)。本籍地が遠方でも、住所地の市区町村の窓口で取得できます。ただし使える場面には制限があります。
- 請求できるのは本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母)・直系卑属(子・孫)に限られます。兄弟姉妹は対象外です。
- 郵送請求と代理人による請求はできません。窓口に出向く必要があります。
- 対象は戸籍・除籍の全部事項証明書です。一部事項証明書・個人事項証明書は取得できません。コンピュータ化されていない古い戸籍も対象外です。
- 窓口で顔写真付きの身分証明書(運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなど)の提示が必要です。
- 手数料は本籍地で取る場合と同額で、戸籍謄本450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本750円が目安です(自治体の条例で定まります)。
ここが実務の落とし穴です。相続人調査では被相続人の兄弟姉妹の戸籍や、代襲相続人となる甥・姪の戸籍も必要になりますが、これらは広域交付では取れません。本籍地への郵送請求か、委任状による代理人請求に切り替える必要があります。「広域交付で全部そろう」と誤解したまま期限だけが過ぎる例が少なくありません。
相続人の範囲と法定相続分
配偶者は常に相続人となり、血族は子(第1順位)→直系尊属(第2順位)→兄弟姉妹(第3順位)の順に、先の順位の人がいる間は相続人になりません。内縁関係の人は相続人に含まれず、相続放棄をした人は初めから相続人でなかったものとして扱われます。割合は民法第900条で次のように定まっています。
| 相続人の組み合わせ | 法定相続分 |
|---|---|
| 配偶者と子 | 配偶者2分の1、子は全員で2分の1 |
| 配偶者と直系尊属 | 配偶者3分の2、直系尊属は全員で3分の1 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者4分の3、兄弟姉妹は全員で4分の1 |
| 子のみ・直系尊属のみ・兄弟姉妹のみ | 同順位の者で均等に分ける |
| 父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹 | 父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1 |
法定相続分は、話し合いがまとまらなかったときの基準です。全員が合意すれば、この割合と違う分け方をしても構いません。なお、嫡出でない子の相続分は嫡出子と同じで、平成25年の民法改正以降、差はありません。
戸籍がそろったら、法定相続情報証明制度を使うと後の手続きが一度で済みます。戸籍の束を法務局に提出して「法定相続情報一覧図」の写しの交付を受ける制度で、平成29年5月29日から運用されています。手数料は無料で、必要通数の写しを受け取れ、金融機関の相続手続き・相続登記・相続税の申告で共通して使えます。戸籍の束を何度も出し直す手間がなくなります。
財産を把握する(財産目録の作成)
相続財産はプラスだけではありません。借入金・未払いの医療費・保証債務といったマイナスも相続の対象で、マイナスが多い場合は相続放棄や限定承認の検討に入ります。まずは「あるはず」の思い込みを外して、次の項目を順に確認します。
- 預貯金 通帳・キャッシュカード・郵便物から金融機関を洗い出し、残高証明書を取ります。休眠口座は銀行に照会します。
- 有価証券 証券会社の口座、上場株式、投資信託、国債。証券保管振替機構への照会で見つかる場合があります。
- 不動産 登記簿と固定資産税の課税明細で確認します。借地権・借家権・未登記の建物も落とさずに拾います。
- 生命保険・年金 保険金の受取人指定があるものは原則として相続財産になりませんが、相続税の対象にはなります。
- 事業用資産 法人の株式、事業用の機械・車両、売掛金・買掛金。事業を営んでいた場合は別途の手続きが必要です。
- 負債 住宅ローン、カードローン、未払いの税金・公共料金、連帯保証債務。
遺産分割がまとまる前でも、生活費や葬儀費用に充てるために預金を引き出せます。相続預金の払戻し制度(民法第909条の2、令和元年7月1日施行)で、各相続人が単独で「相続開始時の預金額×3分の1×その人の法定相続分」まで、金融機関ごとに150万円を上限として払戻しを受けられます。手続きには相続人であることと法定相続分が分かる書類が必要で、家庭裁判所の判断を経る仮分割の制度とは別物です。
評価額は、不動産なら固定資産税評価額(相続税の申告では路線価方式または倍率方式)、預貯金なら相続開始日の残高、上場株式なら相続開始日の終値が基準になります。財産の洗い出しと評価の実務は相続財産調査の流れと具体的な方法で詳しく解説しています。
遺言の有無を確認する
遺言があれば、遺産分割の土台は遺言の内容になります。確認すべき場所は3つです。自宅の保管書類、法務局(自筆証書遺言書保管制度)、公証役場(公正証書遺言)です。法務局に保管されている遺言書は、相続人が遺言書保管事実証明書(800円)で有無を確認でき、内容は遺言書情報証明書(1,400円)で取得できます。
遺言には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3形式があります。自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自書して押印する必要がありますが(民法第968条)、相続財産の目録についてはパソコンで作成できます(同条第2項)。ただし方式を一つでも外すと無効になるため、書き方の確認は省けません。
令和2年7月10日に始まった自筆証書遺言書保管制度を使うと、法務局が原本を保管し、紛失・改ざんのリスクを避けられます。保管申請は遺言書1通につき3,900円、遺言者本人が遺言書保管所(法務局)に出向いて申請します。最大の利点は、この制度で保管された遺言書が家庭裁判所の検認を要しないことです。
一方、公正証書遺言は公証人が作成する形式で、証人2人以上の立会いが必要です(民法第969条)。こちらも検認は不要です(民法第1004条ただし書)。自筆証書遺言を自宅で保管していた場合は、相続の開始後に家庭裁判所へ提出して検認を請求しなければなりません(同条本文)。検認は遺言の内容を確定する手続きで、有効性を判断するものではない点に注意してください。
遺言の種類と使い分けは遺言の重要性と作成方法、公正証書遺言の手続きと費用は公正証書遺言とは?手続きやメリット・デメリットで詳しく扱っています。なお、遺言があっても、一定の相続人には遺留分が保障されます。遺言どおりに分けた結果、遺留分を下回る相続人が出る場合は、後の章で説明する遺留分侵害額請求の対象になります。
遺産分割の進め方
遺言がない場合、相続人全員の協議で分け方を決めます(民法第907条第1項)。協議に参加できるのは相続人全員で、一人でも欠けた状態でまとめた合意は無効です。未成年の相続人がいる場合は親権者が代理しますが、親権者自身も相続人である場合は利益が相反するため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てます。
合意が整ったら遺産分割協議書を作成します。記載するのは、相続人全員の氏名・住所、分割の対象となる財産の特定(不動産は地番・地積・家屋番号まで)、誰が何を取得するか、取得しない相続人の確認です。全員が署名し、実印で押印して印鑑証明書を添付します。この形式を整えておくと、不動産の登記や預金の払い戻しでそのまま通用します。
協議がまとまらない場合の選択肢は、家庭裁判所への調停の申立てです(民法第907条第2項)。調停でも合意に至らなければ、審判に移行して裁判所が分け方を決めます。話し合いが長期化すると、その間ずっと預金が凍結され、不動産も動かせない状態が続きます。
遺留分と、期限のある2つの請求
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人(配偶者・子・直系尊属)に認められる最低限の取り分です。総体的遺留分は、直系尊属のみが相続人である場合は相続財産の3分の1、それ以外の場合は2分の1です(民法第1042条第1項)。これを各人の法定相続分で按分した額が、その人の遺留分になります。
遺留分を侵害された相続人は、金銭の支払を請求できます。相続の開始と、遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと時効で消滅し、相続開始から10年が経過しても消滅します(民法第1048条)。「言われてみれば不公平だった」と気づいた時点から1年しかない点は、必ず押さえてください。
同じ3か月という短期の期限で、相続放棄・限定承認があります。自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述します(民法第915条第1項)。相続放棄の申述には、申述人1人につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手が必要です。この期間は家庭裁判所に申し立てれば伸長できますが、相続財産を処分してしまうと単純承認とみなされ、放棄できなくなります。
協議書の書き方と記載例は遺産分割協議書の書き方にまとめています。事業を営んでいた方が亡くなった場合、建設業許可のような許認可は相続だけでは承継されず、別途の手続きが必要です。詳しくは建設業許可の承継とは?相続・合併・事業譲渡などの分類と手続きの流れをご覧ください。
期限のある手続き
相続で怖いのは、金額よりも期限の取りこぼしです。とくに相続放棄の3か月と準確定申告の4か月は、過ぎた後の救済が限られます。まずは全体像を一つの表で確認してください。
| 期限 | 手続きと根拠 |
|---|---|
| 7日以内 | 死亡届(戸籍法第86条) |
| 5日以内 | 健康保険の資格喪失届(勤務先経由。国民健康保険は14日以内が目安) |
| 10日以内 | 厚生年金の受給権者死亡届(国民年金は14日以内。マイナンバー収録済みなら原則不要) |
| 3か月以内 | 相続放棄・限定承認の熟慮期間(民法第915条) |
| 4か月以内 | 準確定申告(所得税法第125条) |
| 10か月以内 | 相続税の申告・納付(相続税法第27条) |
| 1年以内 | 遺留分侵害額請求(知った時から。民法第1048条) |
| 3年以内 | 相続登記の申請(不動産登記法第76条の2) |
| 令和9年3月31日 | 令和6年4月1日より前に相続した不動産の相続登記(経過措置) |
| おおむね10か月以内 | 農地法第3条の3の届出(農業委員会) |
期限の数え方は、初日不算入です(民法第140条)。死亡した日は数えず、その翌日から起算します。たとえば1月6日に死亡した場合、相続税の申告期限は11月6日になります。この日が土曜日・日曜日・祝日に当たるときは、その翌日が期限とみなされます。
過ぎてしまった場合の扱いは手続きごとに違います。相続税は期限後でも申告自体はでき、加算税・延滞税がかかります。準確定申告は、還付を受ける申告であれば5年以内なら受け付けられます。相続放棄は3か月を過ぎると原則できませんが、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てる余地が残されています。いずれも「過ぎたから終わり」ではなく、早く相談するほど選択肢が残ります。
不動産の名義変更(相続登記)
令和6年4月1日から、相続登記の申請が法律上の義務になりました。相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請します(不動産登記法第76条の2第1項)。正当な理由がないのに申請を怠ると、10万円以下の過料の対象です(同法第164条第1項)。過料は裁判所が決定するもので、自動的に科されるわけではありませんが、放置の前提で組むのは危険です。
施行日前に始まった相続も対象です。令和6年4月1日より前に相続した不動産で登記が済んでいないものは、令和9年3月31日までに申請する必要があります(民法等の一部を改正する法律・令和3年法律第24号 附則第5条第6項)。「昔の話だから関係ない」は通用しません。
さらに、遺産分割が成立した場合は、その日から3年以内に分割の内容に即した登記を申請する義務が別に生じます(同法第76条の2第2項)。これは基本の義務とは別枠なので、相続登記を済ませた後でも、後から遺産分割をした場合は期限が動きます。
期限までに結論が出ないときの逃げ道が相続人申告登記です(同法第76条の3)。自分が登記名義人の相続人であることを登記官に申し出れば、基本の義務を履行したものとみなされます。相続人の一人が単独で申し出ることも、他の相続人の分を代理して申し出ることもできます。ただし、権利関係を公示するものではないため、売却や抵当権の設定をする場合は通常の相続登記が必要です。
どのケースで登記が必要になるかは、次の表で確認してください。
| 状況 | 必要な対応 |
|---|---|
| 被相続人名義の土地・建物がある | 相続登記が必要。知った日から3年以内、施行前の相続は令和9年3月31日まで |
| 遺産分割で取得者が決まった | 分割成立日から3年以内に、分割内容に即した登記が必要 |
| 預貯金・有価証券だけ | 登記は不要。金融機関の相続手続きのみ |
| 不動産を売却したい | 売却の前に相続登記が必要。未登記のままでは決済できない |
| 相続人全員が相続放棄した | 次の順位の相続人に権利が移る。登記名義の整理は別途必要 |
| 農地を相続した | 相続登記に加え、農業委員会への農地法第3条の3の届出が必要 |
登記にかかる税金は登録免許税で、不動産の価額(固定資産税評価額)の1,000分の4が原則です。評価額2,000万円の土地なら8万円になります。これに戸籍収集の実費と、司法書士に依頼する場合の報酬が加わります。申請先は不動産の所在地を管轄する法務局で、千葉県内の物件は千葉地方法務局またはその支局が窓口です。
相続した土地が使い道のない山林や遠隔地だった場合、相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらえる場合があります。令和5年4月27日に始まった制度で、対象は相続または相続人への遺贈で取得した土地です。審査手数料は土地1筆あたり14,000円で、申請を取り下げても却下・不承認になっても返還されません。承認された場合は、10年分の土地管理費相当額の負担金を納付します。申請先は土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局の本局で、支局・出張所では受け付けてもらえません。建物がある土地、担保権が設定された土地、境界が明らかでない土地は対象外です。
相続税がかかる場合
相続税は、遺産の総額が一定の額を超えたときに発生します。その基準が遺産に係る基礎控除額で、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です(相続税法第15条)。法定相続人の数は、相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとして数えます。養子がいる場合は、実子がいれば養子1人まで、実子がいなければ養子2人までを法定相続人の数に含めます。
| 相続人の構成 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 配偶者のみ | 3,600万円 |
| 配偶者と子1人 | 4,200万円 |
| 配偶者と子2人 | 4,800万円 |
| 子2人のみ | 4,200万円 |
| 配偶者と兄弟姉妹2人 | 4,800万円 |
申告と納付の期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内です(相続税法第27条)。申告先は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署になります。納付が一度に難しい場合は延納や物納の制度がありますが、いずれも申請と要件の確認が必要で、期限ぎりぎりでは間に合いません。
忘れやすいのが準確定申告です。被相続人に所得があった場合、相続人が代わりに確定申告を行います。期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です(所得税法第125条)。年金を受給していた人でも、公的年金等の収入が一定額を超えていたり、医療費控除を受けたりしていた場合は必要になります。相続税の10か月より短いため、先に期限が来るものとして優先してください。
相続税の計算では、配偶者が取得した財産について配偶者の税額軽減があり、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。小規模宅地等の特例も併用できます。ただし、これらの特例は申告しないと適用されません。計算の結果として税額が0円になっても、特例を受けるために申告が必要になるケースがあります。
専門家に頼む範囲
相続は、行政書士・司法書士・税理士・弁護士・公証人と、担当が細かく分かれています。それぞれの資格でできることが法律で定まっているため、頼む相手を間違えると手続きが止まります。まずは分担の全体像を押さえてください。
| やること | 担当する専門家と根拠 |
|---|---|
| 戸籍の収集、相続関係図の作成 | 行政書士。官公署に提出する書類・事実証明に関する書類の作成として行う |
| 遺産分割協議書、同意書、上申書などの作成 | 行政書士。権利義務に関する書類の作成(行政書士法第1条の2・第1条の3) |
| 法定相続情報一覧図の申出の代理 | 行政書士。法務局への提出手続きの代行として行う |
| 遺言の原案作成、公正証書遺言の調整・証人の手配 | 行政書士。遺言の効力を巡る争いになれば弁護士の領域 |
| 不動産の登記申請 | 司法書士。登記申請の代理は司法書士法第3条で定められている |
| 相続税の申告、税務相談 | 税理士。税務代理・税務書類の作成は税理士法第2条の業務 |
| 相続人間の交渉、調停・訴訟の代理 | 弁護士。法律事務の代理は弁護士法第72条により弁護士の独占業務 |
| 公正証書遺言の作成 | 公証人。公証役場で作成する |
| 相続放棄・調停の申立て | 本人が家庭裁判所へ申し立てる。代理人を立てる場合は弁護士 |
行政書士の業務は、官公署に提出する書類、権利義務に関する書類、事実証明に関する書類の作成と、その相談・提出手続きの代行です(行政書士法第1条の2、第1条の3)。ただし「他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項」には手を出せません。具体的には、登記申請の代理(司法書士の領域)、税務申告(税理士の領域)、争いのある法律事務(弁護士の領域)がこれに当たります。
この線引きは、行政書士が「相続全体を丸ごと引き受ける」わけではないことを意味します。逆に、戸籍の収集から協議書の作成、法務局への提出書類の準備までを一つの窓口で進められる点は、相続人にとって負担の軽い選択肢になります。相続人同士の主張が対立している段階では、行政書士は交渉に入れないため、早い段階で弁護士への切り替えが必要です。
どこまで頼むかは、相続人の人数、不動産の有無、争いの有無で変わります。費用の目安は料金表に、よくある相談はよくある質問にまとめています。個別の状況についてはお問い合せからご連絡ください。
よくある質問
相続手続きは何から始めればいいですか?
死亡届の提出と、被相続人の出生から死亡までの戸籍の収集から始めてください。戸籍で相続人が確定しないと、遺産分割協議も登記も税の申告も進められません。並行して、期限の短い年金・健康保険の届出と、遺言書の有無の確認を進めます。
相続人の戸籍がそろわない場合はどうすればいいですか?
まず不足している戸籍の種類を特定してください。兄弟姉妹や甥・姪の戸籍は広域交付の対象外なので、本籍地への郵送請求か、委任状による代理人請求に切り替えます。相続人に行方不明の人がいる場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人や特別代理人の選任を申し立てる必要があります。戸籍がそろわないまま協議を進めると、後から合意が無効になる危険があります。
相続登記をしないとどうなりますか?
正当な理由がないのに申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法第164条第1項)。また、名義が被相続人のままだと売却や抵当権の設定ができず、次の世代に相続が重なると相続人が増えて手続きが格段に難しくなります。期限までに分割がまとまらない場合は、相続人申告登記で義務を履行しておく方法があります。
相続税がかからない場合でも申告は必要ですか?
遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば、申告も納税も不要です。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を受けて税額が0円になる場合は、特例の適用を受けるために申告が必要です。判断に迷う場合は、財産の評価が固まった時点で税理士に確認してください。
行政書士に頼める範囲はどこまでですか?
戸籍の収集、相続関係図の作成、遺産分割協議書や各種同意書の作成、法務局への提出書類の準備、遺言の原案作成の支援までが中心です。不動産の登記申請は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人との交渉や調停の代理は弁護士の領域になります。相続人の間で主張が対立している場合は、早めに弁護士へ相談を切り替えることをおすすめします。
まとめ
相続手続きの成否を分けるのは、特別な知識よりも順番と期限です。死亡届を出し、戸籍を集めて相続人を確定し、遺言と財産を確認する。この土台ができると、遺産分割協議書の作成、相続登記、相続税の申告へと迷わず進めます。逆に、相続人が確定しないまま協議書を作ったり、期限の短い準確定申告を後回しにしたりすると、後戻りの手間が大きくなります。
期限だけを先に確認したい方は、この記事の表3(期限のある手続き)を保存してお使いください。3か月・4か月・10か月・3年という4つの数字を押さえるだけで、取りこぼしの大半は防げます。千葉県内で相続の書類作成や手続きの進め方に迷ったときは、行政書士に早めにご相談ください。

