産業廃棄物の不法投棄は、捨てた者だけの責任ではありません。安い見積りで処理を委託した排出事業者も、その土地を管理する所有者も、状況によっては措置命令や費用負担の対象になります。投棄そのものは廃棄物処理法第16条で禁止され、罰則は5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金です。以下、誰がどこまで問われるのか、罰則の条文、委託基準とマニフェスト、発覚後の流れ、原状回復の費用、再発防止のチェックリストの順に整理します。

不法投棄とは|「みだりに捨てる」行為と不適正処理の違い

廃棄物処理法第16条は「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。」の一文だけです。主体を問わず、廃棄物をみだりに捨てる行為を禁止しています。事業者か個人か、産業廃棄物か一般廃棄物かを区別していない点が、この条文の特徴です。

「みだりに」に法令上の定義規定はありませんが、産業廃棄物処理基準(法第12条第1項、施行令第6条)に従わない形で廃棄物を捨てる行為を指すと解されています。許可を受けた処分場に搬入する、定められた方法で埋め立てるといった適正な処理ではなく、山林や空き地、河川敷に運んで降ろす、建物の裏に積み上げたままにするといった行為が該当します。

行政の統計では、不法投棄と不適正処理を分けて集計しています。不法投棄は廃棄物を捨てる行為そのもの、不適正処理は処理基準に反する保管・収集運搬・処分(野積み、無許可での焼却、基準を満たさない埋立など)を指します。環境省が公表した令和6年度の調査では、新たに判明した不法投棄が106件・1.4万トン、不適正処理が113件・6.0万トン、令和6年度末時点の残存事案が2,920件・999.1万トンでした。件数だけを見ると減少傾向にありますが、残存量は依然として1,000万トン規模で積み上がっています。

実行者の内訳も公表されています。令和6年度に新たに判明した不法投棄のうち、実行者が判明した事案では、件数が最も多いのが排出事業者で35件(33%)、投棄量でも8,843トン(61.4%)と最も多い区分でした。投棄した運搬業者だけでなく、廃棄物を出した側が実行者の中心になっている点は、後述する委託責任の重さにつながります。

千葉県は、廃棄物の適正処理を進めるため「千葉県廃棄物の処理の適正化等に関する条例」(廃棄物適正化条例)を制定しています。条例の制定趣旨の説明では、制定当時、不法投棄された産業廃棄物の量が全国一であったことと、処理しきれない量の廃棄物が不法に堆積していたことが背景として挙げられています。全国的な傾向が改善しても、地域で積み上がった残存物の処理は別の問題として残ります。

なお、産業廃棄物にどのような種類があり、どこまでが産業廃棄物にあたるのかは産業廃棄物とは?種類と管理方法で整理しています。まず自分の事業場から出るものが産業廃棄物かどうかを確定させないと、委託先の許可が足りているかどうかの判断もできません。

罰則|5年以下の拘禁刑、法人は3億円以下の罰金

不法投棄の罰則は、廃棄物処理法第25条第1項第14号です。「第十六条の規定に違反して、廃棄物を捨てた者」は、5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するとされています。懲役と罰金のどちらか一方ではなく、両方を科すこともできる建て付けです。

同条第2項は、第14号の罪の未遂も罰すると定めています。運搬してきた廃棄物を降ろす直前で止められた、積み込みの段階で発覚したといった場合でも、投棄の実行に着手していれば処罰の対象になり得ます。「まだ捨てていないから大丈夫」という整理は通用しません。

法人の責任は第32条です。法人の代表者や従業者が業務に関して第25条第1項第14号の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、法人に対して3億円以下の罰金刑を科すと定めています。個人の上限1,000万円に対して法人は3億円で、従業員が現場で判断した行為でも法人が同じように罰せられる両罰規定です。

「拘禁刑」という表記に馴染みがないかもしれません。令和7年6月1日に施行された刑法の改正で、懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されました。それ以前の条文や解説記事では「5年以下の懲役」と書かれているため、古い資料と突き合わせるときは読み替える必要があります。刑の重さは変わっていません。

不法投棄そのもの以外にも、委託の場面には罰則があります。無許可の業者に処理を委託すると第25条第1項第6号(5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金)、委託契約書の不備や許可の範囲外への委託といった委託基準違反は第26条第1号(3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)です。措置命令に従わない場合は第25条第1項第5号で、こちらも5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金となります。

行為と罰則
不法投棄(捨てた場合) 法第25条第1項第14号。5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(併科可)。法人は3億円以下(第32条)
投棄の未遂 法第25条第2項。既遂と同じ刑を科し得る
無許可業者への委託 法第25条第1項第6号。5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金
委託基準違反 法第26条第1号。3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
措置命令違反 法第25条第1項第5号。5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金
改善命令違反 法第26条第2号。3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
帳簿の不備・未保存 法第30条第1号。30万円以下の罰金
管理票の交付・保存義務違反 直接の罰則はなく、法第12条の6の勧告・公表・命令で担保
表1 不法投棄と委託をめぐる罰則

マニフェストの行だけ「罰則なし」と書きました。これは義務が軽いという意味ではありません。管理票の交付・保存義務には罰金刑が定められておらず、都道府県知事の勧告、従わなければ公表、それでも従わなければ命令という段階を踏んで是正を迫る仕組みになっています(法第12条の6)。命令違反にも直接の罰則はありませんが、後述するとおり、管理票の義務違反は措置命令の対象事由になります。行政処分と費用負担の側から跳ね返ってくる点が、罰金の有無より重いといえます。

罰則の全体像をつかんだうえで、次に「誰が問われるのか」を主体ごとに整理します。

主体と問われる根拠
投棄した者 法第16条違反として第25条第1項第14号の刑罰。運搬業者でも元請でも同じ
委託した排出事業者 無許可委託(第12条第5項)・委託基準違反(同条第6項)の刑罰、第19条の6の措置命令、管理票義務違反による第19条の5の命令
土地の所有者 法第5条第2項の通報義務(努力義務)。自分で積み上げた場合は不適正保管として第19条の5の対象。千葉県条例では土地利用計画の確認
元請業者 下請負人が投棄した場合、第19条の5第1項第4号により措置命令の対象になり得る
要求・依頼した者 処分等をすることを要求し、依頼し、唆し、または助けた者も第19条の5第1項第5号の対象
表2 不法投棄で責任を問われる主体

委託した排出事業者の責任|「知らなかった」で終わらない

排出事業者が最初に守るべき線は、産業廃棄物の運搬・処分を委託できる相手を限定する規定です。法第12条第5項は、運搬については産業廃棄物収集運搬業の許可を受けた者その他省令で定める者に、処分については産業廃棄物処分業の許可を受けた者その他省令で定める者に委託しなければならないと定めています。無許可の業者に頼めば、その時点で罰則付きの違反です。

許可があれば足りるわけでもありません。施行令第6条の2第1号・第2号は、委託しようとする廃棄物の運搬・処分が、その業者の「事業の範囲」に含まれていることを求めています。収集運搬業の許可を持っていても積替え保管の範囲が限定されていたり、処分業の許可が特定の種類の廃棄物に限られていたりすれば、範囲外の委託は委託基準違反です。許可証の写しを取って、種類・区域・積替えの有無まで見る必要があります。

さらに重いのが、法第19条の6の措置命令です。都道府県知事は、生活環境の保全上の支障が生じている場合で、次のいずれにも該当すると認められるときは、その事業活動に伴い当該産業廃棄物を生じた排出事業者に対し、期限を定めて支障の除去等の措置を命ずることができます。

  • 処分者等の資力その他の事情からみて、処分者等だけでは支障の除去等の措置を講ずることが困難であり、または講じても十分でないとき(第1号)
  • 排出事業者が処理に関し適正な対価を負担していないとき、処理が行われることを知り、または知ることができたときその他これに準ずる事情があるとき(第2号)

つまり、投棄した業者に資力がなく、排出事業者が相場より明らかに安い金額で委託していた場合は、排出事業者自身が原状回復を命じられます。「委託したから自分は関係ない」という立場は、この条文の前では成り立ちません。安さを理由に業者を選んだこと自体が、命令の要件を満たす方向に働きます。

措置命令の対象は、投棄した者だけに限られません。法第19条の5第1項第3号は、管理票(マニフェスト)の交付・記載・送付・保存の義務に違反した者を対象に掲げています。第5号は、処分等をすることを要求し、依頼し、唆し、または助けた者を対象としています。第4号は、下請負人が投棄した場合の元請業者です。現場の実態として、誰がどこまで関与したかが問われる建て付けになっています。

実務で最も多い落とし穴は、見積りの異常な安さです。適正な処理には運搬費と処分費がかかり、処分費は廃棄物の種類と量で決まります。同じ内容で他社より極端に安い見積りが出てきたら、処分場までの運搬を省いている、許可の範囲外の方法で処分している、そもそも処分していない、のいずれかを疑うべきです。許可証の写しを出さない業者、契約書を交わしたがらない業者、マニフェストの返送が遅い業者は、その時点で取引を見直す判断材料になります。

委託先を選ぶ前提として、収集運搬業の許可がどのように更新され、どの範囲で有効なのかを知っておく必要があります。許可の有効期間や更新の期限、必要書類は産業廃棄物収集運搬業の更新|千葉県の期限と必要書類で整理しています。委託契約を更新するタイミングで、相手の許可証の期限も必ず確認してください。

土地所有者の責任|貸しただけでは終わらない

廃棄物処理法第5条第1項は、土地または建物の占有者(占有者がいない場合は管理者)に対し、その占有・管理する土地建物の清潔を保つように努めなければならないと定めています。同条第2項は、土地の所有者または占有者が、その土地で他の者によって不適正に処理された廃棄物と認められるものを発見したときは、速やかに都道府県知事または市町村長に通報するよう努めなければならないとしています。いずれも「努めなければならない」の努力義務ですが、放置した期間が長いほど、関与の度合いを問われやすくなります。

法律の条文上、土地を持っているというだけで直ちに措置命令が出るわけではありません。法第19条の5の措置命令は、保管・収集・運搬・処分を行った者などを対象にしています。ただし、自分の土地に廃棄物を積み上げたままにしている場合、その行為は「保管」にあたります。他人が運び込んだものを受け入れて置き続けた場合も同じで、土地所有者自身が第19条の5第1項第1号の「保管を行った者」として命令の対象になり得ます。

千葉県の条例は、この点をさらに一歩進めています。廃棄物適正化条例では、土地所有者は不法投棄されないよう適正な管理に努めるとともに、不法投棄された廃棄物を県が取り除いたときは、不法投棄に責任のある土地所有者は、その土地の利用計画について県の確認を受けなければ引き続いて利用することができないとされています。撤去費用を負担するかどうかとは別に、土地の使い方そのものが制約される仕組みです。

千葉県は、農地や山林等の安易な土地の提供が廃棄物の不適正処理につながるとして、土地を持つ人向けの注意を継続的に発信しています。不審な車両を見つけたら通報する、侵入防止柵や掲示板を設置する、土地や倉庫を貸すときは相手方と事業内容を調べる、という3点が挙げられています。貸主が用途を確認せずに土地を貸し、そこで廃棄物が積み上げられれば、契約上の責任と行政上の指導の両方が貸主に及ぶ可能性があります。

売却や担保の場面でも影響は出ます。不法投棄された廃棄物が残ったままの土地は、原状回復の費用負担が見込まれるため、買主・金融機関の判断が慎重になります。撤去の見通しと費用の負担者を整理しておくことが、実務上の対応になります。

マニフェストと委託基準|5年保存と90日・180日の期限

委託の適正さを証明する書類が、産業廃棄物管理票(マニフェスト)と委託契約書です。法第12条の3第1項は、運搬または処分を他人に委託する場合、廃棄物の引渡しと同時に、種類・数量・受託者名などを記載した管理票を交付しなければならないと定めています。交付した側はその写しを5年間保存し(同条第2項、施行規則第8条の21の2)、運搬・処分を終えた受託者から送り返された写しも、受領日から5年間保存します(同条第6項、規則第8条の26)。

写しが戻ってくるまでの期限も決まっています。運搬受託者は運搬を終了した日から10日以内、処分受託者は処分を終了した日から10日以内、最終処分が終了した旨の写しは10日以内に送付します(規則第8条の23、第8条の25、第8条の25の3)。交付者は、交付日から90日(特別管理産業廃棄物は60日)以内に運搬・処分終了の写しを、180日以内に最終処分終了の写しを受け取る必要があります(規則第8条の28)。この期間を過ぎても届かない場合は、速やかに状況を把握し、必要な措置を講じたうえで、期限から30日以内に知事へ報告します(同条第8項、規則第8条の29)。

マニフェストは紙でも電子でも構いません。電子マニフェストは情報処理センターを経由して交付・回付・保存を行う仕組みで(法第12条の5)、紙の写しの郵送を省けます。いずれの場合も、交付した事実と処理が終了した事実を自社で確認できる状態にしておくことが目的です。

委託契約書の側にも決まりがあります。施行令第6条の2第4号は、委託契約を書面で行い、契約書に次の事項の条項を入れ、環境省令で定める書面を添付することを求めています。廃棄物の種類と数量、運搬の最終目的地、処分・再生の場所と方法・処理能力、最終処分の場所と方法・処理能力などです。加えて施行規則第8条の4の2は、契約の有効期間、料金、受託者の事業の範囲、積替え・保管を行う場所、廃棄物の性状に関する情報などを盛り込むべき事項として挙げています。添付する書面は許可証の写しです(規則第8条の4)。契約書と添付書面は、契約終了の日から5年間保存します(規則第8条の4の3)。

項目見るものとポイント
許可許可証の写し。交付者名が契約相手と一致しているか
種類収集運搬か処分か。両方必要なら2つの許可を確認
範囲廃棄物の種類、区域、積替え保管の有無が委託内容に足りるか
期限契約期間の末日が許可の期限を超えていないか
表3 委託前に確認する4点
場面期限と保存期間
交付廃棄物の引渡しと同時(法第12条の3第1項)
運搬終了運搬終了日から10日以内に送付(規則第8条の23)
処分終了処分終了日から10日以内に送付(規則第8条の25)
受取期限交付日から90日(特管は60日)、最終処分は180日(規則第8条の28)
未着報告期限経過後30日以内に知事へ(規則第8条の29)
保存期間いずれも5年(規則第8条の21の2、第8条の26、第8条の4の3)
表4 マニフェストと委託契約書の期限

発覚したときの流れ|通報から処分まで

不法投棄が疑われる事案は、通報から始まります。千葉県では「産廃残土県民ダイヤル(産廃110番)」が24時間・年中、産業廃棄物や残土の不法投棄に関する相談を受け付けています。現行犯や緊急性がある場合は警察への通報が優先です。通報の際は、場所、廃棄物の種類と量、車両のナンバー、日時を伝えられると、その後の監視と特定が進みます。

通報を受けた都道府県知事は、必要に応じて立入検査を行います(法第19条第1項)。事業場の帳簿、マニフェスト、契約書、許可証を確認し、廃棄物の処理が基準に適合しているかを調べます。ここで委託の経路がたどれるかどうかが、その後の責任の所在を決めます。マニフェストが交付されていなければ、廃棄物が誰から誰へ渡ったのかを書類で追えず、排出事業者の特定が難しくなります。

行政の対応は、大きく3つに分かれます。1つ目は改善命令です。処理基準に適合しない保管・収集・運搬・処分が行われた場合、知事は必要な措置を講ずべきことを命じます(法第19条の3)。2つ目は措置命令で、生活環境の保全上の支障が生じている場合に、原因者や排出事業者、管理票義務違反者などに支障の除去等の措置を命じます(法第19条の5、第19条の6)。3つ目は事業停止・許可取消しで、収集運搬業者・処分業者が基準違反や不正の手段による許可取得などに該当すると、業務停止や許可の取消しの対象になります(法第14条の3、第14条の3の2)。

命令に従わないまま期限が過ぎれば、知事が自ら撤去その他の措置を講じます。いわゆる行政代執行で、かかった費用は原因者から徴収します(法第19条の8第2項、行政代執行法第5条・第6条の準用)。措置命令を出す前に原因者を確知できない場合や、緊急を要する場合も、知事が自ら措置を講じたうえで費用を負担させることができます。

刑事面では、都道府県が告発に踏み切る事案があります。千葉県では廃棄物指導課の監視指導室が行政処分と告発を担当しており、法違反の内容に応じて告発の判断が行われます。行政処分の内容は県のウェブサイトで年度ごとに公表され、過去5年分が閲覧できる状態です。条例に基づき、不法投棄行為者等を公表する枠組みも用意されています。

民事の責任も並行して発生します。投棄によって土地や地下水に損害が生じた場合、土地の所有者や周辺の住民は、不法行為に基づく損害賠償(民法第709条)や原状回復を請求できます。行政の命令と民事の請求は別の手続きなので、行政処分を受けたから民事の請求が終わるわけではありません。

原状回復の費用|誰がどの順番で負担するのか

原状回復の費用は、まず原因者である投棄行為者に求められます。措置命令に従わない、または資力がない場合は、次に排出事業者が対象になります。法第19条の6が、処分者等の資力不足と、適正な対価を負担していないこと(または処理が行われることを知り得たこと)を要件に、排出事業者へ措置命令を出す仕組みを定めているのはこのためです。

原因者が不明な場合や、命令を出している時間がない場合には、知事が自ら措置を講じます。このときの費用は、後から原因者や排出事業者に請求されます。請求しても回収できない場合に備えて設けられているのが、産業廃棄物適正処理推進センターの基金です。法第13条の15は、適正処理推進センターが業務に要する費用に充てることを条件として事業者等から出えんされた金額を基金とすることを定めています。

環境省の説明によれば、この基金は平成10年6月17日以降に発生した事案を対象に、原因者が支障除去等の措置をとらず、やむを得ず都道府県等が支障除去等を行う場合の費用を支援する制度です。支援の対象は行政対応に大きな問題がない場合などに限られます。基金を管理しているのは産業廃棄物適正処理推進センター(公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団)です。基金があることで、知事は費用の捻出をためらわずに措置命令を出せる、というのが制度の狙いです。

費用の実額は事案ごとに異なり、一律の単価は公表されていません。廃棄物の種類、数量、性状、搬出の距離、処分先の受入条件で決まるため、見積りを取る以外に正確な数字を出す方法はありません。逆にいえば、数量と性状が分かれば費用の概算は立てられます。不法投棄が疑われる段階で、まず数量を把握することが、その後の交渉と負担の整理の出発点になります。

土地の所有者が自分で撤去した場合は、原因者に対する求償が残ります。行政の措置命令を待たずに撤去すると、生活環境上の支障を早く解消できる一方で、費用の回収は民事の交渉と訴訟に委ねられます。撤去の前に、原因者の特定と資力の確認をどこまで進めるかが判断の分かれ目です。

再発防止のチェックリスト

不法投棄を防ぐ実務は、委託の前・委託中・委託後の3段階に分けると整理しやすくなります。委託前は相手の許可と契約書、委託中はマニフェストの往復、委託後は書類の保存と更新時の再確認です。どれか1つを徹底しても、他の段階が抜けていれば書類のつながりが切れます。

チェック項目
委託前 許可証の写しを取り、種類・事業の範囲・有効期限を確認。契約書に種類・数量・最終処分地・料金・有効期間を明記する
委託前 見積りが相場から大きく外れていないか。処分費の内訳を出せる業者か
委託中 引渡しと同時にマニフェストを交付し、90日・180日の期限を管理台帳で追う
委託中 処分場の現地確認。中間処理後の処理物の行き先まで把握する
委託後 写しと契約書を5年保存。毎年6月30日までに管理票の報告書を提出する
更新時 許可の更新状況を再確認。許可の範囲が変わっていないかを見る
表5 再発防止のチェックリスト

建設業では、この流れに建設リサイクル法の手続きが重なります。特定建設資材(コンクリート、コンクリート及び鉄から成る建設資材、木材、アスファルト・コンクリート)を用いた建築物等の解体工事や、これを用いる新築工事等のうち、規模が基準以上のものが対象建設工事です(法第9条第1項、施行令第1条)。

規模の基準は工事の種類ごとに決まっています。建築物の解体工事は床面積の合計80平方メートル、建築物の新築・増築は500平方メートル、それ以外の新築工事等は請負代金1億円、建築物以外の解体工事・新築工事等は請負代金500万円です(施行令第2条)。対象建設工事では分別解体等が義務づけられ(法第9条)、発注者または自主施工者は工事着手の7日前までに都道府県知事へ届け出ます(法第10条第1項)。同じ者が2以上の契約に分割して請け負った場合は、1つの契約とみなして基準を適用するため、分割発注で対象外にすることはできません(施行令第2条第2項)。

産業廃棄物の処理をめぐる法令は、廃棄物処理法のほかにもリサイクル関連法が重なっています。全体の関係は廃棄物処理とリサイクルの法律で整理しています。分別解体の対象かどうかを確認せずに工事を始めると、廃棄物の処理とは別の角度から指導を受けることになります。

委託先の選定そのものについては、収集運搬業の許可の仕組みと、千葉県内で業者を探す際の考え方を産業廃棄物収集運搬業でまとめています。許可を持っていることと、自社の廃棄物を適正に処理できることは別なので、許可証と契約内容の両方で確認してください。

よくある質問

不法投棄と不適正処理は何が違いますか

不法投棄は廃棄物をみだりに捨てる行為で、法第16条が禁止し、第25条第1項第14号の罰則が適用されます。不適正処理は、処理基準に反する保管・収集運搬・処分の総称で、野積みや基準を満たさない焼却などが含まれます。行政の統計でも別に集計されており、令和6年度は不法投棄106件、不適正処理113件でした。どちらも措置命令の対象になり得ます。

委託先が無許可だった場合、排出事業者も罰せられますか

罰せられます。法第12条第5項は委託できる相手を許可業者に限定しており、これに違反すると第25条第1項第6号により5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金の対象です。加えて、投棄された廃棄物について第19条の6の措置命令を受け、原状回復の費用を負担する可能性もあります。「相手が無許可とは知らなかった」ことは、直ちに免責にはなりません。

土地を貸しただけでも責任を問われますか

貸したという事実だけで直ちに罰則が科されるわけではありません。ただし、自分の土地に廃棄物が積み上げられた状態を放置すれば、法第19条の5の「保管を行った者」として措置命令の対象になり得ます。千葉県の条例では、不法投棄に責任のある土地所有者は、撤去後に土地利用計画について県の確認を受けなければ引き続いて利用できません。用途を確認せずに土地を貸すことは、この立場に近づく行為です。

マニフェストの写しが返ってこないときはどうすればよいですか

まず受託者に連絡し、運搬・処分がどこまで進んでいるかを確認します。交付日から90日(特別管理産業廃棄物は60日)、最終処分は180日を過ぎても写しが届かない場合は、速やかに状況を把握し、必要な措置を講じたうえで、期限から30日以内に都道府県知事へ報告します(法第12条の3第8項、施行規則第8条の29)。放置すると、自社が処理の行方を把握していない状態が続くことになります。

過去に投棄された廃棄物が自分の土地から見つかったら

まず都道府県知事または市町村長へ通報してください。法第5条第2項は、土地の所有者・占有者に通報するよう努めることを求めています。通報後に、投棄の時期、経緯、以前の所有者や借主の情報を整理します。原因者が特定できれば費用の請求先が決まりますが、特定できない場合は知事による措置と基金の支援、土地所有者自身の負担という順序で検討することになります。自分で撤去する前に、数量と性状を確認して見積りを取っておくと判断しやすくなります。

まとめ

不法投棄は、捨てた者が罰せられて終わる問題ではありません。投棄した者には5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金が科されます。委託した排出事業者は、無許可委託や委託基準違反の罰則に加え、資力不足や不適正な対価という要件のもとで措置命令を受けます。土地の所有者も、放置した状態によっては保管者として扱われ、千葉県では土地利用計画の確認という形で制約が残ります。

防ぐための要点は3つです。許可証の写しで相手の事業の範囲と有効期限を確認する、契約書に種類・数量・最終処分地・料金を明記して5年保存する、マニフェストの往復を90日・180日の期限で管理する。この3つが書類としてつながっていれば、万が一のときに自社が適正に委託していたことを説明できます。逆に、この3つが欠けていると、投棄に関与していなくても、委託の適正さを立証できない状態になります。