CCUSは、技能者・事業者・現場の3者がそれぞれ登録し、技能者の資格と就業履歴を業界共通の形で蓄積する仕組みです。登録は法律上の義務ではありませんが、国土交通省の直轄工事では活用が前提となり、経営事項審査(経審)ではW評点の加点対象になります。以下、誰が何を登録するのか、費用はいくらか、経審で何点動くのか、千葉県の公共工事ではどう扱われるのかを順に説明します。
CCUSとは何か
建設キャリアアップシステム(Construction Career Up System:CCUS)は、建設業で働く技能者の保有資格、就業履歴、社会保険の加入状況などを登録し、経験と技能を「見える化」する仕組みです。運営主体は一般財団法人建設業振興基金で、国土交通省と建設業団体が連携して普及を進めています。システムの運用は平成31年4月に始まりました。
導入の背景は、建設業の賃金カーブにあります。生産労働者の年齢別賃金のピークは製造業全体では50〜54歳ですが、建設業は45〜49歳と5年ほど早く訪れます。現場管理や後進の指導といったスキルが処遇に反映されにくいこと、そして技能者が複数の事業者の現場を渡り歩くため業界横断の評価基準が存在しないことが、構造的な課題として指摘されてきました。会社ごとの評価では、転職や独立のときに経験を証明できないからです。
そこで、本人に紐づく形で次の情報を蓄積します。
- 氏名・生年月日などの本人情報
- 保有資格と講習の受講履歴
- 健康診断の受診情報(詳細型登録の場合)
- 社会保険の加入状況
- 所属事業者
- いつ、どの現場で、どの職種として、どの立場で働いたかという就業履歴
中心にあるのは就業履歴です。現場に入るたびにICカードをかざし、その記録が日単位で積み上がります。「どのような工事を、何日経験したか」が第三者の目で確認できる状態になるため、技能者本人にとっては経歴の証明に、事業者にとっては施工能力の説明材料になります。
3者が登録する|技能者・事業者・現場
CCUSは1回登録すれば終わりという仕組みではありません。性格の異なる3つの登録が揃って、はじめて就業履歴が残ります。技能者だけがカードを持っていても、受け入れる現場が登録されていなければ、その日の就業は記録されません。
| 登録の種類 | 登録する人と役割 |
|---|---|
| 技能者登録 | 技能者本人。ICカードの交付を受ける |
| 事業者登録 | 技能者を雇用する事業者・一人親方。管理者IDで情報を管理 |
| 現場登録 | 元請事業者。現場と契約情報を登録し施工体制を紐づける |
技能者登録は本人が行うのが原則ですが、雇用事業主や上位企業による代行申請も認められています。とくに社会保険の加入情報を正しく登録する必要があるため、雇用事業主による代行申請が推奨されています。事業者登録は技能者を雇用する側すべてが対象で、法人だけでなく一人親方も事業者として登録します。現場登録は元請事業者の役割で、下請は現場を登録するのではなく、元請が作った施工体制に組み込まれる立場です。
技能者登録の流れ
技能者登録は、申請方法と登録の型を選ぶところから始まります。申請方法はインターネットか認定登録機関の2つで、認定登録機関の窓口では書面による詳細型登録のみを受け付けています。
登録の型は2種類です。簡略型は本人情報などの基本情報だけを登録してカードの発行を受けるもの、詳細型は簡略型の情報に加えて保有資格や健康診断などの情報を登録するものです。能力評価(レベル判定)の申請には保有資格の情報が必要になるため、レベルアップを視野に入れるなら詳細型を選びます。
- 申請方法(インターネット/認定登録機関)と登録の型(簡略型/詳細型)を決める
- 本人確認書類(運転免許証など)の写しを用意する
- 申請し、運営主体または認定登録機関が本人確認と審査を行う
- 審査の完了後に技能者IDが付与される
- 顔写真入りのICカード(建設キャリアアップカード)が指定住所に郵送される
カードの有効期間は、発行日から9年が経過した後の最初の誕生日までです。申請時に60歳以上の方は14年目の誕生日まで、本人確認書類を提出していない方は2年目の誕生日までとなります。更新は10年ごとで、費用の負担もそのタイミングで発生します。カードを紛失・破損した場合や券面の書き換えが必要な場合は、実費1,000円で再発行します。
事業者登録の流れ
事業者登録は、建設業許可通知書などの証明書類を添えて申請します。建設業許可の情報と連携することで入力項目が簡略化されるため、許可を持っている事業者は手続きが短くなります。審査が終わると事業者IDが付与され、メールまたは郵送で通知されます。
事業者登録をすると、情報を管理するための管理者IDが自動的に1つ作成されます。2つ目以降のIDは有償で追加する形です。現場管理者として登録したIDについては、管理者IDの利用料はかかりません。登録の有効期間は5年間で、登録が完了した日から5年後の登録月末まで有効です。
ここでつまずきやすいのが、建設業許可の内容との整合です。商号や所在地、役員、営業所の技術者といった情報が許可簿と食い違っていると、審査の途中で確認が入ります。許可の変更届を出していない変更が残ったまま事業者登録を進めると、後から両方を修正する手間が発生します。まず許可情報を整えたい場合は千葉県の建設業許可の取得と更新を、変更が生じている場合は建設業許可の変更届をご確認ください。
費用はいくらかかるか
費用は、技能者登録料、事業者登録料、管理者ID利用料、現場利用料の4つに分かれます。金額はすべて税込で、運営主体が公表している料金表のとおりです。技能者登録料は10年ごと、事業者登録料は5年ごと、管理者ID利用料は毎年、現場利用料は就業履歴の登録件数に応じて発生します。
| 申請方法 | 技能者登録料 |
|---|---|
| ネット・簡略型 | 2,500円 |
| ネット・詳細型 | 4,900円 |
| 登録機関・詳細型 | 4,900円 |
| 簡略型から詳細型へ変更 | 2,400円 |
| カードの再発行 | 1,000円 |
簡略型で登録したあとに詳細型へ切り替えると、差額ではなく2,400円が別途かかります。最初からレベル判定を視野に入れている場合は、詳細型で登録したほうが総額は抑えられます。
| 資本金の額 | 事業者登録料 |
|---|---|
| 一人親方 | 0円 |
| 500万円未満 | 6,000円 |
| 500万〜1,000万円 | 12,000円 |
| 1,000万〜2,000万円 | 24,000円 |
| 2,000万〜5,000万円 | 48,000円 |
| 5,000万〜1億円 | 60,000円 |
| 1億〜3億円 | 120,000円 |
管理者ID利用料は1IDあたり年11,400円、一人親方は年2,400円です。現場利用料は元請事業者の負担で、就業履歴1件(1人日・1現場)あたり10円です。20人の技能者が50日働いた現場なら、20人×50日×10円で10,000円になります。
資本金500万円未満の法人が、技能者5人を詳細型で登録し、管理者IDを1つ持つ場合の初年度は、6,000円+24,500円+11,400円で41,900円です。これに現場利用料が加わります。技能者1人あたりの登録料は4,900円で、カードは約10年有効ですから、年換算すると500円弱になります。資格や経験を第三者の目で確認できる状態を保てることを踏まえると、負担は小さい部類に入ります。
現場での運用|カードリーダーと就業履歴
現場が動き出すと、元請事業者が現場と契約の情報を登録し、そこに下請を含む施工体制を紐づけます。技能者は入退場のたびにカードをカードリーダーにかざし、その記録が就業履歴として蓄積されます。退場の打刻を忘れた場合は翌日に処理するなど、日次の運用ルールを決めておくことが実務の要です。
就業履歴の蓄積方法は3つあります。1つ目は元請事業者がカードリーダーを用意し、運営主体が提供するソフトでカードを読み取る方法、2つ目は就業履歴データ登録標準API連携の認定を受けた民間サービスを使う方法、3つ目は事務所のパソコンから直接入力する方法です。
この3つ目の「直接入力」が、経審の加点では認められていません。経審の評価項目は「直接入力によらない方法で就業履歴を蓄積できる体制の整備」を求めており、カードリーダーや認定システムによる記録が前提になります。運用コストを抑えて手入力に寄せると、日々の記録は残っても加点は取れないという点に注意してください。
下請事業者の側でやることは、技能者を登録してカードを持たせ、元請が登録した現場の施工体制に自社の技能者が載っていることを確認する作業です。元請が現場を登録していない期間は、カードをかざしても履歴は残りません。現場ごとに、誰が現場登録を担当するのかを決めておくと抜けが減ります。
能力評価(レベル判定)とカードの色
CCUSに蓄積された資格と就業日数、職長経験などをもとに、技能者の能力を4段階で評価する仕組みが能力評価制度(レベル判定)です。評価は国土交通大臣が認定した能力評価基準に基づき、分野ごとの能力評価実施団体が行います。基準が策定されている分野は51分野で、令和8年9月には鉄骨が加わりました。
4段階は、初級技能者(見習い)、中堅技能者(一人前の技能者)、職長として現場に従事できる技能者、高度なマネジメント能力を有する技能者(登録基幹技能者等)という区分です。交付されるカードの色も段階に応じて変わり、レベル1がホワイト、レベル2がブルー、レベル3がシルバー、レベル4がゴールドになります。現場で一目で立場が分かるため、職長の配置や作業の割り振りを決める材料にもなります。
レベル判定を受けるには、詳細型で登録したうえで能力評価を申請します。申請は分野ごとの実施団体に対して行うため、自社の技能者がどの分野の基準に該当するかを先に確認しておくと迷いません。国土交通省が公表している判定件数は、令和8年6月30日時点で合計172,927件(レベル4が68,952件、レベル3が48,724件、レベル2が55,251件)です。レベル1は申請なしで交付されるため、この件数には含まれていません。
経審W評点での評価
経営事項審査(経審)の評点は、完成工事高(X1)、経営規模(X2)、経営状況(Y)、技術力(Z)、その他の審査項目(W)の合計で決まります。CCUSはこのうちWの一項目「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」として評価されます。計算式の全体は経営事項審査の評点計算で扱っています。
加点には3つの要件があり、すべてを満たす必要があります。1つ目がCCUS上での現場・契約情報の登録、2つ目が直接入力によらない方法で就業履歴を蓄積できる体制の整備、3つ目が経営事項審査の申請時に様式第6号の誓約書を提出することです。
評価の対象になるのは、審査基準日の1年以内に発注者から直接請け負った建設工事です。海外の工事、建設業法施行令で定める軽微な工事、災害応急工事は除かれます。対象工事のすべてで措置を実施していれば10点、公共工事のすべてで実施していれば5点です。対象工事が1件もない場合は加点されないため、元請として直請けの実績がない年は、この項目では点が動きません。
| 評価項目 | 令和8年7月改正後 |
|---|---|
| 就業履歴(全工事) | 10点(改正前15点) |
| 就業履歴(公共のみ) | 5点(改正前10点) |
| 企業の自主宣言 | 5点(新設) |
| 社会保険の加入 | 削除(各▲40点) |
令和8年7月1日以降の申請からは、就業履歴の配点が民間工事を含む全工事で15点から10点へ、公共工事のみの取組では10点から5点へ引き下げられました。あわせて「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言による5点が新設され、社会保険加入の減点項目(各▲40点)は削除されています。W評点の下限は▲1,838点から▲788点に、P点の下限は6点から163点に上がりました。
配点が下がったとはいえ、項目自体は残っています。Wは申請前の書類と運用の整備で動かせる数少ない領域であり、10点を落とすとP点でも差がつきます。減点の撤廃と下限の引き上げは、これまで社会保険の未加入で点を落としていた事業者にとってはプラスに働きます。改正の全体像とP点への影響は経審の評点計算の記事で詳しく説明しています。千葉県で受審する場合の日程は千葉県の経営事項審査をご覧ください。
公共工事での扱い
国は公共工事の発注を通じてCCUSの活用を後押ししてきました。国土交通省の直轄工事では令和2年度にモデル工事を試行し、段階的に対象を広げ、令和5年度からはあらゆる工事で実施する方針を示しています。工事成績評定で加点または減点する仕組みで、達成状況が評定に反映されます。総合評価での加点も令和2年4月から始まり、現在は国の機関のほか、都道府県、政令市、市区町村、独立行政法人が発注する工事にも広がっています。
千葉県も独自の取組を実施しています。県が発注するすべての工事を対象に、契約後・工事着手前に受注者が希望した場合に実施する「受注者希望型」です。次の3項目をすべて満たすと、カードリーダー等の費用補助と工事成績評定における評価を受けられます。工事成績評定の評価は請負金額500万円以上の工事が対象で、令和6年2月14日から施行、企業評価等は令和6年4月1日から適用されています。
| 実施項目 | 目標基準 |
|---|---|
| 事業者登録 | 元請の登録が完了 |
| 技能者登録 | 1名以上が登録済み |
| 就業履歴の蓄積 | タッチ率30%以上 |
要件は自治体ごとに異なります。加点の有無、対象工事の金額、求めるタッチ率は発注者によって違うため、入札を検討する段階で公告と入札説明書、総合評価の評価項目を確認するのが確実です。入札参加資格の仕組みは入札参加資格の記事で整理しています。
よくある質問
登録は義務ですか
CCUSへの登録を義務付ける法令はなく、建設業許可の要件にも含まれていません。ただし、国土交通省の直轄工事では活用が前提となっており、工事成績評定や総合評価に影響します。公共工事を受ける予定があるなら、実務上は避けて通れない仕組みと考えるのが実際的です。
一人親方でも登録できますか
できます。一人親方は事業者としても技能者としても登録します。事業者登録料は0円で、管理者ID利用料は年2,400円です。技能者登録料は通常と同じく簡略型2,500円、詳細型4,900円です。
技能者は自分で登録するのですか
本人が申請するのが原則ですが、雇用事業主や上位企業による代行申請も認められています。社会保険の加入情報を正確に登録する必要があるため、雇用事業主がまとめて代行するケースが一般的です。本人確認書類の写しは、いずれの方法でも必要になります。
登録すると何が変わりますか
技能者にとっては、現場が変わっても資格と就業履歴を本人の経歴として示せるようになります。事業者にとっては、入退場管理の効率化、人材配置の判断材料、経審W評点の加点、公共工事での評価という4つの効果が考えられます。効果の大きさは業種と元請・下請の立場によって変わります。
レベル判定は受けなければいけませんか
受けるかどうかは任意です。受けない場合はレベル1のカードが交付されます。レベルを上げると処遇や現場での立場に結びつきやすくなりますが、判定には詳細型登録と分野ごとの申請が必要です。まずは詳細型で登録し、対象分野を確認してから申請する順序で問題ありません。
まとめ
CCUSは、技能者・事業者・現場の3者が登録してはじめて機能する仕組みです。技能者はカードを受け取り、元請は現場を登録してカードリーダーを設置し、その記録が就業履歴として積み上がります。費用は技能者1人あたり数千円から、事業者は資本金に応じた登録料と管理者ID利用料、元請は現場利用料が加わります。
経審では、直近1年に発注者から直接請け負った工事での取組が評価され、全工事で実施すれば10点、公共工事のみなら5点です。令和8年7月改正で配点は下がりましたが、項目は残っており、自主宣言の5点が新たに加わりました。公共工事では国も千葉県も活用を前提とした評価を行っているため、登録と現場運用を一度整えてしまえば、以降は更新と日々の記録の運用に移るだけです。
事業者登録では建設業許可の情報と突き合わせが行われます。許可の内容に変更がある場合は変更届、決算期をまたぐ場合は事業年度終了届が先です。許可を取った直後の実務は建設業許可の取得後にやること、申請書類の作り方は建設業許可申請の書類でまとめています。建退共の掛金納付もCCUSの就業履歴を使う方式に対応しており、建退共の仕組みとあわせて整えると事務が一本化できます。
技能者登録の代行、事業者登録の準備、経審の申請とあわせて確認したい場合は、行政書士法人LDパートナーズまでご相談ください。
出典:一般財団法人建設業振興基金「ご利用方法・料金」「CCUSについて」、国土交通省「建設キャリアアップシステムポータル」「建設技能者の能力評価制度」「経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)」「建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況」、千葉県「建設キャリアアップシステムについて」(令和6年2月9日発表)。

