「これまでより大きな工事を受注したい」「元請会社から建設業許可の取得を求められた」。こうした場面で、建設業許可を検討する事業者の方もいらっしゃるでしょう。しかし、調べ始めると、経営経験、技術者、財産的基礎など、聞き慣れない言葉が並び、何から準備すればよいか迷うかもしれません。

建設業許可の取得では、自社に必要な許可を整理し、要件を満たしているか、その事実を書類で証明できるかを順番に確認することが大切です。今回は、千葉市を拠点とする行政書士の視点から、初めて千葉県知事許可を取得する方に向けて、一般建設業の許可を中心に解説します。

まず確認したいのは、請け負う工事に許可が必要かどうかです。建築一式工事以外では、原則として、1件の請負代金が税込500万円以上となる工事を請け負う場合に許可が必要です。元請だけでなく下請にも適用され、個人事業主か法人かによって、この基準が変わるわけではありません。

建築一式工事については、税込1,500万円未満の工事、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅工事が「軽微な建設工事」に当たります。ただし、建物に関する工事がすべて建築一式工事になるわけではありません。塗装や内装などの専門工事を単独で請け負う場合は、その工事に対応する判断が必要です。国土交通省「建設業の許可とは」

金額の計算にも注意しましょう。例えば、税抜480万円の内装工事は、消費税率10%で計算すると税込528万円になります。また、注文者から材料の支給を受ける場合は、その市場価格や運送賃を加えて判断します。同じ工事を正当な理由なく複数の契約に分けても、原則として合計額で判断されます。契約書に記載した金額だけを見て、許可が不要と決めないことが重要です。千葉県「建設業の許可について・許可の基準」

次に、「知事許可」と「大臣許可」のどちらが必要かを確認します。建設業の営業所を千葉県内だけに設ける場合は、千葉県知事許可が基本です。二つ以上の都道府県に営業所を設ける場合は、国土交通大臣許可になります。判断基準は工事現場の所在地ではなく、建設業の営業所の所在地です。千葉県知事許可でも、東京都や神奈川県などの工事を請け負うことはできます。国土交通省「許可の区分」

「一般建設業」と「特定建設業」の違いも押さえておきましょう。発注者から直接請け負った1件の工事について、下請に出す代金の総額が税込5,000万円以上、建築工事業では税込8,000万円以上となる場合は、特定建設業許可が必要です。この金額基準は2025年2月1日に引き上げられました。古い解説記事を参考にするときは注意が必要です。国土交通省「建設業の各種金額要件の見直し」

一般・特定の区分は、単に自社が受注する金額の大小で決まるものではありません。元請として受注するのか、どの程度を下請に出すのかを踏まえて判断します。また、建設業許可は29業種に分かれています。建築工事業の許可があれば、あらゆる専門工事を単独で請け負えるという仕組みではありません。実際の施工内容に対応する業種を選ぶ必要があります。大阪府「建設業許可の制度」

許可の種類を整理したら、取得要件の確認に進みます。最初の重要なポイントは、建設業の経営を適正に管理できる体制です。代表的な方法として、法人では常勤の役員のうち1人が、個人では本人などが、建設業に関して5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有することが挙げられます。

ここでいう経営経験は、現場で工事に従事した経験とは異なります。長年職人として働いていても、その年数がそのまま経営経験になるわけではありません。一方、一定の補佐経験や、常勤役員等と直接補佐する人を組み合わせた体制によって要件を満たす方法もあります。「社長になって5年たっていないから無理」と、早い段階で結論を出す必要はありません。国土交通省「許可の要件」

経営経験を検討するときは、いつ、どの事業者で、どのような立場にあり、何を担当していたのかを時系列で整理すると分かりやすくなります。法人の登記事項証明書や確定申告書、工事の契約関係書類など、確認に必要となる資料を洗い出しましょう。経験の説明と資料の内容が一致していることが、申請準備の土台になります。

次のポイントは、営業所技術者等の配置です。以前の「専任技術者」という名称に聞き覚えがある方もいらっしゃるでしょう。一般建設業では、取得する業種に対応した資格や実務経験などを持つ営業所技術者を、営業所ごとに置く必要があります。

一般建設業の代表的な要件には、対応する国家資格を持つこと、一定の指定学科を卒業した後に所定の実務経験を積んでいること、取得したい業種について10年以上の実務経験があることなどがあります。資格の種類や学歴によって扱いが異なるため、資格証や卒業証明書、職歴を確認し、どの基準に当てはまるかを検討します。国土交通省「営業所技術者等」

特に実務経験で申請する場合は、経験年数だけでなく、工事の内容と従事期間を証明できるかが重要です。「リフォーム工事一式」とだけ書かれた資料では、具体的な施工内容が読み取りにくいこともあります。過去の契約書、注文書、請求書などを確認し、不足する説明や資料がないか、事前に整理しておくことが役立ちます。千葉県「確認資料」

営業所技術者等や常勤役員等については、実際に勤務していることの確認も必要です。なお、千葉県では2026年4月1日以降に受け付ける申請から、従来の健康保険被保険者証を常勤性の確認資料として使用できなくなっています。以前申請した人から聞いた準備方法をそのまま使わず、最新の手引きで確認しましょう。千葉県「建設業許可の手引き」

資金面では、一般建設業の新規許可の場合、自己資本が500万円以上あること、または500万円以上の資金調達能力があることなどが確認の中心になります。「資本金を500万円にしなければならない」という意味ではありません。法人の自己資本は原則として貸借対照表の純資産合計であり、資本金とは区別して考えます。千葉県「許可の基準」

例えば、資本金が500万円以上でも、赤字の蓄積によって純資産が500万円未満になっていることはあります。反対に、資本金が少額でも、ほかの方法で財産的要件を満たせる可能性があります。決算書を確認する前から増資などを決めず、自社の状況に合った証明方法を検討することが大切です。

そのほか、加入義務のある健康保険、厚生年金保険、雇用保険への適切な加入、請負契約に関する誠実性、欠格要件に該当しないことも確認します。社会保険については、事業形態や従業員の状況によって適用関係が異なります。また、営業所は名称や登記だけでなく、実際に建設業の営業を行う拠点としての実態を整える必要があります。千葉県「建設業の許可」 大阪府「建設業許可の要件等」

申請準備は、必要な業種と許可区分を決め、人員・経験・資金などの要件を確認し、それぞれの証明資料を集める順番で進めると整理しやすくなります。そのうえで、許可申請書、工事経歴書、財務諸表などを作成します。法人か個人か、資格と実務経験のどちらで技術者要件を満たすかによっても、必要書類は変わります。千葉県「許可申請の手続き」

千葉市に主たる営業所がある事業者が千葉県知事許可を紙で申請する場合、提出先は千葉土木事務所です。千葉市役所への申請ではありません。千葉県では電子申請にも対応しているため、準備状況に応じて方法を選べます。管轄や必要書類は、県の最新案内で確認しておきましょう。千葉県「建設業許可の手引き」

取得時期にも余裕が必要です。千葉県が公表する標準処理期間は、土日・祝日を含めて45日間です。ただし、資料収集や書類作成にかかる期間は別に考える必要があり、補正などによって予定が変わることもあります。大きな工事の契約が決まる直前ではなく、受注を目指す段階から準備を始めたいところです。千葉県「標準処理期間」

許可取得後の管理も忘れてはいけません。有効期間は5年間で、継続するには更新が必要です。また、千葉県では毎事業年度終了後4か月以内に、事業年度終了届を提出します。役員や営業所、技術者などに変更が生じた場合も、内容に応じた届出が必要になります。千葉県「許可取得後の届出事項等」

行政書士に相談する際は、取得したい業種、これまでの経歴、保有資格、直近の決算書、工事の契約関係書類を、分かる範囲で用意していただくと、具体的な検討を進めやすくなります。すべての資料がそろってから相談する必要はありません。何が足りないかを整理することも、許可取得に向けた大切な一歩です。

建設業許可の取得は、受注の幅を広げるとともに、自社の経営体制や書類管理を見直す機会にもなります。千葉市を拠点に事業を営む皆さまが、これまで培ってきた技術や経験を次の仕事につなげられるよう、まずは現在の状況を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

※本コラムは2026年9月時点で確認した公表資料に基づいています。申請時には、最新の千葉県の手引き・様式をご確認ください。