はじめに
建設会社の世代交代や個人事業の法人成り、会社の合併・分割などを考えるとき、忘れてはいけないのが「建設業許可をどうするか」という問題です。
建設業許可は、単に会社や事業を譲渡しただけで自動的に新しい事業者へ移るものではありません。
現在の建設業法では、一定の要件を満たして認可を受けることで、事業譲渡、合併、会社分割、相続の際に「建設業者としての地位」を承継できる制度が設けられています。
千葉県知事許可を受けている事業者についても、この承継制度を利用することで、従来の許可を切れ目なく引き継げる可能性があります。
ただし、特に事業譲渡・合併・分割では、手続きを行う順番が非常に重要です。
本記事では、2026年9月現在の建設業法と千葉県の最新案内をもとに、建設業許可の承継について詳しく解説します。
建設業許可の承継制度とは
建設業法第17条の2および第17条の3には、建設業者の地位を承継するための制度が定められています。
対象となるのは、事業の譲渡・譲受け、合併、会社分割、相続です。
認可を受けたうえで承継が行われると、承継先は承継元が持っていた建設業法上の「建設業者としての地位」を引き継ぎます。
ここで注意したいのは、単に「許可証を引き継ぐ」という制度ではないことです。
千葉県の「建設業許可の承継の手引」によれば、建設業法に基づく届出義務だけでなく、監督処分や経営事項審査の結果などについても承継されます。
つまり、建設業者としての権利だけではなく、建設業法上の義務を含めた地位全体が引き継がれると考える必要があります。
承継するには許可要件を満たしている必要がある
承継制度を利用すれば、誰でもそのまま建設業許可を受け継げるわけではありません。
承継先となる法人や個人は、承継後に営むすべての建設業について、建設業許可の要件を満たしていなければなりません。
具体的には、経営業務の管理を適正に行うための体制、営業所技術者等の配置、財産的基礎、誠実性、欠格要件、社会保険への加入などが問題になります。
なお、2024年以前の記事では「専任技術者」という表現が一般的でしたが、2024年12月13日の建設業法関係法令の改正により、現在は「営業所技術者」および「特定営業所技術者」という名称に変更されています。
千葉県の最新の許可様式でも、この名称に統一されています。
そのため、古い記事を更新する場合には「専任技術者」という表記も見直しておいた方がよいでしょう。
許可業種は原則として全部承継する
承継制度でもう一つ重要なのが、承継元の建設業許可について、原則としてその全部を承継する必要があることです。
例えば、承継元が土木工事業、舗装工事業、造園工事業の許可を持っている場合に、舗装工事業だけを選択して承継するという方法は原則として認められません。
相続以外の場合には、承継したくない業種をあらかじめ廃業したうえで承継認可を申請する方法が考えられます。
また、承継元と承継先が同じ業種について許可を持っている場合には、「一般建設業」と「特定建設業」の区分にも注意が必要です。
例えば、一方が舗装工事業の一般許可、もう一方が舗装工事業の特定許可を持っている場合には、そのまま承継できず、事前にどちらかを廃業するなどの対応が必要になります。
事業譲渡・譲受けによる承継
事業譲渡による承継は、建設業を営んでいる事業者がその事業を別の個人や法人へ譲り渡す場合に利用できます。
代表的なのが、個人事業主が会社を設立して建設業を法人へ移す「法人成り」です。
親から子へ生前に個人事業を引き継ぐ場合や、法人から別法人へ建設事業を譲渡する場合も対象となります。
ここで最も重要なのが、事業譲渡の効力が発生する前に認可を受けなければならないという点です。
事業譲渡を成立させたあとで、「建設業許可も承継したい」と遡って認可を受けることはできません。
千葉県では、承継認可の標準処理期間を、補正がない場合で45日としています。
さらに、相続以外については、承継の事実が発生する遅くとも60日前までに申請するよう案内しています。
したがって、法人成りを行う場合には、「会社をいつ設立するか」だけでなく、「事業譲渡日をいつにするか」「承継認可をいつ申請するか」まで一体として考える必要があります。
合併による承継
会社同士の合併でも建設業許可の承継制度を利用できます。
合併には、ある会社が別の会社を吸収する「吸収合併」と、新しい会社を設立して既存会社が消滅する「新設合併」があります。
例えば、建設業許可を持つA社がB社へ吸収合併される場合、必要な認可を受けることで、B社がA社の建設業者としての地位を承継できます。
ただし、合併についても、合併効力発生日より前に承継認可を受ける必要があります。
会社法上の合併手続きだけを先に進めてしまい、建設業許可の手続きを後から行うという進め方は避けなければなりません。
合併契約、株主総会、債権者保護手続き、登記などのスケジュールと建設業許可の認可手続きを連動させることが重要です。
会社分割による承継
会社分割についても承継制度の対象となります。
会社分割には、既存会社へ事業を移す吸収分割と、新しく設立する会社へ事業を移す新設分割があります。
例えば、複数の事業を行っている会社から建設部門を分離する場合や、グループ会社内で建設事業を再編する場合などに利用されます。
こちらも、単に会社法上の会社分割を行えば建設業許可が自動的に移るわけではありません。
承継先が建設業許可の要件を満たしていることに加え、承継する許可業種や一般・特定の区分などを確認したうえで、分割の効力発生前に認可を受ける必要があります。
相続による承継
個人事業主として建設業許可を受けている方が亡くなった場合には、相続人が建設業者としての地位を承継できる場合があります。
相続は、譲渡・合併・分割とは手続きの考え方が異なります。
死亡という事実を事前に予定して申請することはできないため、相続の場合は事後申請となり、被相続人が死亡した日から30日以内に認可申請を行わなければなりません。
千葉県の承継手引にも、この30日以内という期限が明記されています。
相続人が複数いる場合には、誰が建設業を承継するのかについても整理する必要があります。
また、相続人自身が、承継する建設業について許可要件を満たさなければなりません。
期限内に認可申請を行った場合、死亡の日から認可または不認可の通知を受けるまでの期間については、被相続人に対してされた建設業許可が相続人に対してされたものとみなされます。
個人事業として長年建設業を営んでいる場合には、相続発生後に初めて考えるのではなく、生前の事業譲渡を含めて後継者対策を検討しておくことも重要です。
承継後の建設業許可の有効期間
承継認可を受けた場合、従前の許可の残存期間をそのまま引き継ぐわけではありません。
千葉県の手引によると、承継後の許可の有効期間は、従前の許可の残存期間にかかわらず、承継の日の翌日から5年間となります。
承継日そのものについても許可が有効であるため、認可通知書上は結果として5年と1日の期間が記載されることになります。
許可番号については、原則として承継元の許可番号が使用されます。
千葉県での申請方法と注意点
千葉県知事認可となる場合、原則として承継先の主たる営業所所在地を管轄する土木事務所・出張所へ申請します。
認可申請について手数料はかかりません。
また、千葉県の承継手引では、承継認可については紙による申請とされ、事前に建設・不動産業課へ相談することが推奨されています。
通常の建設業許可については電子申請が利用できますが、承継認可については取扱いが異なるため注意してください。
なお、2026年4月からは、常勤役員等や営業所技術者等の常勤性を確認する資料として、従来使用されていた健康保険被保険者証を使用できなくなりました。
千葉県は、2026年4月1日以降に受付する申請について、健康保険被保険者証以外の資料で常勤性を証明するよう案内しています。
承継申請でも許可要件の確認が必要になるため、古い申請資料をそのまま使用しないよう注意が必要です。
2024年から2026年までの法改正による影響は?
2024年6月には、建設業法および入契法の改正法が公布され、その後段階的に施行されました。
2024年12月には、資材価格高騰への対応や監理技術者等の専任規制の合理化などが施行され、2025年12月12日には改正法が完全施行されています。
完全施行された制度では、適正な労務費の確保や著しく低い労務費等による見積り・請負契約への対応などが盛り込まれています。
もっとも、これらの改正によって、事業譲渡・合併・分割・相続による建設業許可承継制度の基本的な仕組みが変更されたわけではありません。
したがって、2024年に作成した承継記事については、制度そのものを全面的に変更する必要はありませんが、現在の用語、許可要件の確認資料、申請方法などを2026年の実務に合わせて更新する必要があります。
まとめ
建設業許可の承継制度を利用すると、事業譲渡、合併、会社分割、相続に際して、一定の条件のもとで建設業者としての地位を後継者や承継会社へ引き継ぐことができます。
特に重要なのは、譲渡・合併・分割については承継の効力発生前に認可を受ける必要があることです。
千葉県では標準処理期間が45日とされており、相続以外については遅くとも承継予定日の60日前までの申請が案内されています。
一方、相続の場合には被相続人の死亡後30日以内に申請しなければなりません。
事業承継では、会社設立や登記、相続手続きだけでなく、建設業許可のスケジュールも同時に検討することが重要です。
承継を予定している場合には、事業譲渡日や合併・分割の効力発生日を決定する前の段階から、許可要件や必要書類を確認しておくとよいでしょう。
※本記事は2026年9月9日時点の法令および千葉県の公表資料に基づいて作成しています。実際に申請する際は、最新の千葉県「建設業許可の承継の手引」および「建設業許可の手引」を確認してください。

