「うちは従業員が少ないから、建設業許可を取るのは難しいのでは?」
「社長と数名のスタッフしかいないけれど、許可申請はできる?」
「資格を持っている人がいれば、建設業許可は取れる?」
建設業許可の取得を考え始めたとき、このような疑問を持つ方は少なくありません。
特に、会社を立ち上げて数年の事業者様や、少人数で現場を回している会社では、「ある程度の人数がいないと建設業許可は取れないのでは」と考えてしまうことがあります。
しかし、建設業許可には「従業員が○人以上必要」という人数の基準はありません。
代表者1名の会社や、少人数で運営している会社でも、必要な要件を満たしていれば建設業許可を取得することは可能です。
一方で、単純に「人数が少なくても大丈夫」というだけではありません。
重要なのは、会社の中に必要な経験や資格を持った人がいるか、そしてそのことをきちんと証明できるかという点です。
今回は、小規模な会社が建設業許可を取得する際に確認しておきたいポイントを分かりやすく解説します。
建設業許可は会社の規模では決まらない
まず知っておきたいのが、建設業許可の取得と会社の規模は、直接的には関係しないということです。
建設業許可は、大きな建設会社だけを対象とした制度ではありません。
従業員が数十人いる会社であっても許可要件を満たしていなければ取得できませんし、反対に、少人数の会社でも必要な要件を満たしていれば取得できます。
つまり、
「従業員が何人いるか」ではなく、「許可に必要な体制が整っているか」
を見る制度です。
建設業許可を受けるためには、経営業務の管理体制や営業所技術者等、財産的基礎、誠実性など、建設業法上の基準を満たす必要があります。適切な社会保険への加入も許可要件の一つです。
そのため、少人数の会社では「人数を増やすこと」よりも、まず現在の代表者や従業員の経験・資格・勤務状況を整理することが重要です。
そもそも、どんな工事に建設業許可が必要?
建設業を営む場合、原則として、工事の種類ごとに建設業許可を受ける必要があります。
ただし、「軽微な建設工事」のみを請け負う場合については、建設業許可を受けなくても施工することができます。
建築一式工事以外では、原則として1件の請負代金が500万円未満(税込)の工事が軽微な建設工事とされています。
建築一式工事の場合は、
「1件1,500万円未満(税込)」または
「延べ面積150㎡未満の木造住宅工事」
など、異なる基準があります。
そのため、これまで500万円未満の工事を中心に請け負っていた会社でも、
「今後、もっと大きな工事を受注したい」
「元請会社から建設業許可を取得してほしいと言われた」
「公共工事への参入を考えている」
といったタイミングで、建設業許可の取得を検討するケースがあります。
会社が成長してきたときに、建設業許可が次のステップになることも珍しくありません。
ポイント① 経営経験を確認する
建設業許可を考える際、まず確認したいのが経営に関する要件です。
現在の制度では、「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」を有していることが求められています。
ここでよくあるのが、
「会社を設立して5年経ったから、そろそろ建設業許可を取れるはず」
という考え方です。
確かに会社を何年間経営してきたかは重要ですが、単純に会社の設立から一定年数が経過しているだけで、自動的に要件を満たすわけではありません。
たとえば、
「これまでどのような建設業を営んできたのか」
「どのような立場で経営に携わっていたのか」
「その期間について証明できる資料が残っているか」
などを確認していく必要があります。
特に新規申請では、経験そのものだけでなく、その経験を資料で確認できるかどうかが非常に重要です。
「経験は十分あるはずなのに、それを証明する資料が見つからない」というケースもあります。
そのため、建設業許可を検討し始めた段階で、過去の契約書、注文書、請求書などを整理しておくことをおすすめします。
ポイント② 営業所技術者等を確保できるか
もう一つ重要なのが、営業所技術者等です。
以前は「専任技術者」と呼ばれていましたが、2024年12月の建設業法改正に伴い、現在は「営業所技術者」「特定営業所技術者」という名称になっています。
建設業許可では、許可を取得したい業種について一定の資格や実務経験などを有する営業所技術者等を、営業所ごとに配置する必要があります。
たとえば、
- 土木工事業
- 建築工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- 内装仕上工事業
- 電気通信工事業
など、取得したい許可の種類によって必要な資格や経験が変わります。
ここで大切なのが、
「会社に資格を持っている人がいる=必ず許可が取れる」ではない
ということです。
その資格が取得したい建設業の要件に該当しているか、必要な実務経験があるか、営業所における勤務状況などを確認する必要があります。
建設業許可は29業種に分かれているため、「何か資格を持っているから大丈夫」ではなく、取得したい業種と、その人の資格・経験が合っているかを見ることが重要です。
業務委託のスタッフが資格を持っている場合は?
少人数の会社では、正社員だけではなく、業務委託のスタッフや一人親方などと一緒に現場を動かしているケースも多いでしょう。
そこで、
「業務委託で働いている人が必要な資格を持っているから、その人を営業所技術者等にできないか?」
と考えることもあると思います。
しかし、ここは注意が必要です。
営業所技術者等には、その営業所における専任性などが求められるため、単に業務委託契約を結んでいて、日常的に仕事をお願いしているというだけで要件を満たすとは限りません。
雇用・勤務の実態や常勤性について確認されます。
特に少人数の会社では、
「実際には毎日一緒に働いている」
「長年仕事をお願いしている」
という実態があっても、建設業許可上の要件とは別に判断される可能性があります。
資格者が外部スタッフの場合には、申請を始める前に確認しておいた方が安心です。
なお千葉県では、2026年4月1日以降の申請について、常勤役員等や営業所技術者等の常勤性を確認する資料として、従来使用されていた健康保険被保険者証は使用できなくなっています。最新の手引きに基づいて確認資料を準備する必要があります。
ポイント③ 財産的基礎も必要
人に関する要件だけでなく、会社の財産面についても基準があります。
一般建設業許可の場合、「請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用」を有していることが必要です。
千葉県の新規申請では、直近の決算における自己資本などの状況によって、500万円以上の預金残高証明書または融資証明書などが必要になる場合があります。
そのため、
「人の要件は大丈夫そうだから、すぐに申請できる」
と思っていたら、財産要件の確認で準備が必要になるケースもあります。
会社を立ち上げたばかりの場合や、まだ決算回数が少ない会社では、早い段階で財務状況についても確認しておくとスムーズです。
ポイント④ 社会保険への加入状況も確認
現在の建設業許可では、適切な社会保険への加入も重要な許可要件です。
適用事業所に該当する場合には、
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
について、適切に届出を行っている必要があります。
特に従業員が少ない会社では、
「うちは人数が少ないから社会保険は関係ないのでは?」
と思われることがあります。
しかし、必要な加入手続きは会社の形態や雇用状況によって異なります。
法人なのか個人事業なのか、従業員を雇っているのかなどによって確認する必要があるため、建設業許可の申請前に現在の加入状況を整理しておきましょう。
「従業員が少ない」ことより、誰がどの要件を満たすのかが重要
ここまで見ると、建設業許可で大切なのは会社の人数ではないことが分かります。
たとえば従業員が2人の会社でも、
代表者が経営に関する要件を満たし、
営業所技術者等となれる人がいて、
財産的基礎や社会保険などその他の要件もクリアしていれば、
建設業許可を取得できる可能性があります。
反対に、従業員が20人いても、必要な技術者がいなかったり、経営経験を証明できなかったりすれば、すぐには許可を取得できない場合があります。
ですから、
「うちは小さい会社だから無理だろう」
と最初から諦める必要はありません。
まずは現在いる人について、
「代表者はこれまで何年、どのような事業を経営してきたか」
「誰がどの資格を持っているか」
「どんな工事経験があるか」
「その経験を証明できる書類はあるか」
を洗い出してみましょう。
それだけでも、許可取得までに何が足りないのかが見えてきます。
これから建設業許可を取りたい会社が最初に確認したいこと
これから許可取得を考えている場合、いきなり申請書を書き始める必要はありません。
まずは次の4つを整理してみると分かりやすいでしょう。
① どの建設業許可を取りたいのか
現在行っている工事と、今後受注したい工事を整理します。
② 経営経験を誰で満たすのか
代表者や役員など、これまでの経営経験を確認します。
③ 営業所技術者等を誰にするのか
資格・実務経験・勤務状況などを確認します。
④ 必要な証明資料があるか
資格証だけでなく、過去の経験や常勤性などを確認するための資料が必要になります。
この段階で一度整理しておけば、
「今すぐ申請できるのか」
「あと何が必要なのか」
「人員体制を変更する必要があるのか」
が見えやすくなります。
まとめ|少人数でも建設業許可は目指せます
建設業許可には、「従業員が○人以上いなければ取得できない」という決まりはありません。
そのため、一人法人や少人数の建設会社でも、必要な要件を満たしていれば許可取得を目指すことができます。
大切なのは会社の大きさではなく、
経営に関する要件を満たしているか、営業所技術者等を配置できるか、財産的基礎や社会保険などその他の条件をクリアしているか
という点です。
また、建設業許可では「実際に経験があること」と同じくらい、その経験を資料によって確認できることも重要です。
「従業員が少ないから取れないかもしれない」
「資格者はいるけれど、この体制で申請できるか分からない」
「将来的に大きな工事や公共工事にも挑戦したい」
という場合には、まず現在の会社の状況を整理して、どの要件を満たしているのか確認するところから始めてみてください。
建設業許可は、会社を大きくしてから考えるものとは限りません。
今後どのような仕事を受注していきたいのかを考え、そのために必要な許可や体制を早めに整えておくことが、次の仕事につながる第一歩になります。

