本記事の要約(結論)
- 2026年6月19日の法改正により、一定の使用済金属・プラスチック物品の保管・再生事業に新たな許可制度が導入されます。法律は、公布日から2年6か月を超えない範囲内で政令により定める日に施行される予定です。
- 許可対象となる事業者には、保管・再生基準の遵守や帳簿の作成が求められる予定です。囲い、保管物の高さ、飛散・流出防止、汚水対策、騒音・振動、火災防止、分別保管などが具体的な検討項目となっています。
- 一方で、許可不要となる敷地面積や、高さ・保管面積などの具体的な数値基準は2026年8月時点では未確定です。「5m」「200㎡」「2m」などは検討段階の数値であり、今後の政省令・ガイドラインを確認する必要があります。
- そのため、今の段階では設備工事を急ぐより、自社の取扱物品、保管方法、再生工程、敷地・排水設備、火災対策、帳簿管理などを整理しておくことが重要です。千葉県内の事業者は、国の新制度に加えて、千葉県や市の既存条例との関係も確認しながら準備を進めましょう。
はじめに
スクラップヤードを取り巻く法制度が、大きく変わろうとしています。
2026年6月19日、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律」が公布され、使用を終了して収集された金属・プラスチック物品の保管や再生を行う事業者に対して、新たな許可制度が導入されることになりました。環境省の資料では、法律の施行は公布日から2年6か月を超えない範囲内で政令により定める日とされており、2028年12月19日より前に施行される予定です。
これまで、スクラップヤードで取り扱われる金属やプラスチックのうち、有価物として取引されるものについては、原則として廃棄物処理法の規制対象外となるケースがありました。
一方で、一部のスクラップヤードでは、騒音、悪臭、水質・土壌汚染、火災などの問題が発生していることが指摘されています。環境省が令和7年度に実施した実態調査では、全国4,625事業場の一部で、こうした生活環境上の支障が計275件確認されています。
こうした状況を踏まえ、今回の法改正では、一定の「使用済金属・プラスチック物品」の保管・再生事業について許可制を導入し、保管基準・再生基準の遵守や帳簿の作成などを事業者に求める方向となっています。
特に千葉県では、国に先行してスクラップヤードを対象とした条例による規制が行われてきました。今回の国の制度設計においても、千葉県を含む条例制定自治体へのヒアリングが実施され、その運用実績や課題が検討材料とされています。
そのため、千葉県内でスクラップヤードを運営している事業者にとっては、既存の県・市の条例だけでなく、今後施行される国の新たな許可制度についても確認していく必要があります。
もっとも、2026年8月時点では、すべての具体的な基準が確定しているわけではありません。
環境省では「スクラップヤード環境対策技術検討会」を設置し、保管基準・再生基準やガイドラインの内容について検討を進めています。検討会では、囲いの設置、保管物の高さ、飛散・流出防止、地下浸透防止、油水分離装置、騒音・振動対策、火災防止、分別保管など、実際のスクラップヤード運営に直結する事項が具体的な論点となっています。
したがって、事業者として重要なのは、「法律が施行されてから考える」のではなく、現在の事業場が新制度に対応できるかを早い段階から確認しておくことです。
この記事では、今回の廃棄物処理法等の改正によってスクラップヤード事業者にどのような影響が生じるのか、誰が許可の対象となるのか、どのような保管基準が検討されているのか、そして今から何を準備しておくべきなのかを、環境省の公表資料をもとにわかりやすく解説します。
スクラップヤードをめぐる廃棄物処理法改正とは
なぜ全国的な規制が導入されるのか
今回の法改正の背景には、一部のスクラップヤードで発生してきた生活環境上の問題があります。
環境省の資料では、不適正なスクラップヤードに起因する問題として、騒音、悪臭、水質・土壌汚染、火災などが挙げられています。令和7年度に行われた実態調査では、全国4,625事業場の一部で、こうした問題が合計275件確認されています。
スクラップヤードは、金属やプラスチックを再び資源として循環させるうえで重要な役割を担っています。一方で、適切な保管設備や環境対策を講じずに操業する事業者が存在すると、周辺住民の生活環境に影響を及ぼすだけでなく、適正な設備投資を行っている事業者との間で競争条件に差が生じることになります。
環境省は、こうした不適正な事業者への対応に加えて、国内の循環資源の回収を拡大し、不適正な国外流出を抑制することも今回の制度改正の重要な目的として示しています。
これまでは「有価物」であれば規制対象外となる場合があった
スクラップヤード規制を理解するうえで重要なのが、「廃棄物」と「有価物」の違いです。
従来、スクラップヤードで取り扱われる金属やプラスチックであっても、有価物として売買されているものについては、原則として廃棄物処理法による規制の対象外となる場合がありました。
環境省の資料でも、従来は金属等の有価物が原則として廃棄物処理法の規制対象外であり、実際には廃棄物に該当するような物品であっても、「有価物」と称して規制を逃れようとする事業者が存在したことが指摘されています。
今回の法改正は、このような規制の空白部分に対応するものです。
つまり、「廃棄物ではないから廃棄物処理法上の規制は関係ない」という従来の整理だけでは済まなくなる可能性があります。
使用を終了し、収集された金属・プラスチック物品のうち、生活環境の保全上、適正な保管や再生が必要なものについては、有価物であっても新制度の対象となり得ます。
不適正ヤード対策と資源循環の両立が求められている
今回の制度は、単にスクラップヤード事業を厳しく規制することだけを目的としているわけではありません。
環境省の検討会資料では、スクラップヤードが「資源循環の輪において重要な役割を担っている」ことも明記されています。
実際、第1回スクラップヤード環境対策技術検討会では、鉄、非鉄金属、プラスチック、自動車リサイクルなどの事業者団体から、適正に事業を行っている事業者に過度な負担をかければ、国内の資源循環そのものを阻害するおそれがあるとの意見が出されています。
これに対し環境省も、循環経済への移行に悪影響を及ぼすことは本意ではなく、関係業界の意見を踏まえて具体的な基準を検討していく考えを示しています。
したがって、今後の政省令では、不適正な事業者には実効性のある規制を設けつつ、適正に営業している事業者には過度な負担とならない制度設計が重要になります。
新たに規制対象となる「使用済金属・プラスチック物品」とは
「使用済金属・プラスチック物品」の基本的な定義
今回の改正法では、新たに「使用済金属・プラスチック物品」という概念が設けられています。
環境省資料では、使用済金属・プラスチック物品について、
「使用を終了し、収集された物品で、その全部又は一部が金属又はプラスチックから成るもの」
と整理されています。
ただし、廃棄物そのものや、放射性物質およびこれによって汚染された物は除かれます。
この定義からわかるように、規制対象は、いわゆる「雑品スクラップ」に限定されません。
使用済家電、使用済基板、金属スクラップ、使用済プラスチックなど、事業場で広く取り扱われている物品が対象になり得ます。
すべての使用済金属・プラスチック物品が同じ扱いになるわけではない
改正法では、使用済金属・プラスチック物品のうち、適正でない保管や再生が行われた場合に、人の健康や生活環境に被害を生ずるおそれがあるものについて、さらに区分を設けています。
環境省の資料では、こうした物品を「要適正再生使用済金属・プラスチック物品」などとして整理しています。
これは、廃棄物ではなく有価物として流通している場合であっても、保管方法や再生方法によっては火災、汚水流出、土壌汚染、騒音などの問題が発生するおそれがあるためです。
つまり、事業者にとって重要なのは、「売れる物だから規制対象外」と判断するのではなく、その物品が新制度上どの区分に該当するのかを確認することです。
想定されている対象物品
環境省の検討資料では、対象となり得る物品の例として、次のようなものが示されています。
- 金属スクラップ
- 使用済家電
- 使用済基板などの雑品スクラップ
- 使用済プラスチック
- 使用済鉛蓄電池
- リチウムイオン蓄電池
- 家電4品目
特に、使用済鉛蓄電池、リチウムイオン蓄電池、家電4品目などについては、それぞれの物品の性質に応じた保管・再生基準を検討することが環境省の技術検討会で示されています。
ただし、2026年8月時点では、どの物品がどの範囲まで規制対象となるかについて、最終的な政省令・ガイドラインがすべて確定しているわけではありません。
そのため、自社で扱っている物品が対象かどうかを判断する際には、今後公表される政省令やガイドラインの確認が不可欠です。
「再生原料」になれば規制対象から外れるのか
事業者にとって特に重要になるのが、「使用済物品」と「再生原料」の境界です。
例えば、鉄スクラップを切断したもの、アルミを圧縮したもの、プラスチックをペレット化したものなどについて、どの段階で「使用済物品」ではなく「再生原料」と評価されるのかは、実務上大きな問題になります。
環境省の技術検討会では、「完成品の製造工程」と「再生原料」の定義を明確にすることが主要な検討事項として掲げられています。
第1回検討会でも、鉄スクラップについては、切断しても見た目が大きく変わらない場合があることや、プラスチックのようにペレット化されて明確に性状が変化する場合とは事情が異なることが事業者団体から指摘されています。
このため、現時点では「一定の加工をすれば必ず規制対象外になる」と判断することはできません。
今後は、素材ごとの特性、公的な規格、第三者認証なども含め、事業者と行政の双方が判断しやすい基準が整理される予定です。
まずは自社の取扱物品を整理しておく
新制度への対応として、事業者が早めに行っておきたいのは、自社で取り扱っている物品の棚卸しです。
例えば、
- 何を仕入れているか
- どの状態で受け入れているか
- どのように保管しているか
- 切断・圧縮・破砕・選別など、どの工程を行っているか
- 加工後の物品をどのような名称・品質で出荷しているか
- 国内向けか、輸出向けか
といった点を整理しておくと、新制度の対象範囲が明確になった際に、自社が許可対象になるかを判断しやすくなります。
特に、複数の種類のスクラップを混在して取り扱っている事業者や、電池・家電・基板類を扱う事業者は、今後の政省令の内容を注意して確認する必要があります。
スクラップヤード事業者に導入される許可制
許可が必要となる「保管業」と「再生業」
今回の改正では、一定の「要適正保管使用済金属・プラスチック物品」や「要適正再生使用済金属・プラスチック物品」を取り扱う事業について、新たに許可制が導入されます。
環境省資料では、許可対象となる事業として、大きく次の2つが示されています。
- 譲渡のために行う保管
- 切断、圧縮、破砕、選別、洗浄などの再生
また、再生を行うために必要な保管も、再生業の一部として位置付けられる想定です。
これまで有価物として金属スクラップや使用済プラスチックを仕入れ、ヤード内で保管したり、重機や機械で切断・圧縮・選別したりしていた事業者についても、取扱物品や事業内容によっては新たな許可制度の対象となる可能性があります。
したがって、自社が単に「保管だけ」をしているのか、それとも切断・圧縮・破砕・選別などの「再生」まで行っているのかを整理しておくことが重要です。
許可権者は都道府県知事等
環境省資料では、要適正保管使用済金属・プラスチック物品の保管業または要適正再生使用済金属・プラスチック物品の再生業を行おうとする者は、原則として都道府県知事の許可を受けなければならないとされています。
もっとも、都道府県知事の権限については、廃棄物処理法施行令で定める市に移管することが予定されています。
環境省資料では、指定都市や中核市が想定されています。
そのため、千葉県内であっても、事業場の所在地によって申請先が異なる可能性があります。
実際に制度が施行される際には、
- 千葉県への申請となるのか
- 千葉市など市への申請となるのか
- 既存の条例手続との関係はどうなるのか
といった点を確認する必要があります。
許可を受けるために求められる基準
新制度は、申請書を提出すれば自動的に許可される仕組みではありません。
環境省の資料では、適正に保管または再生事業を行うことができる「経理的基礎」や「技術的基礎」などを有する者に許可を与える考え方が示されています。
許可基準の例としては、次のような事項が挙げられています。
事業を継続できる経理的基礎
事業を的確かつ継続して行うために必要な経理的基礎を有していることが求められる方向です。
スクラップヤード事業は、スクラップを有価で購入し、加工・選別などをしたうえで売却する事業形態も多いため、具体的にどのような財務状況をもって「経理的基礎がある」と判断するのかは、実務上重要な論点です。
第1回技術検討会でも、千葉県の委員から、こうした有価物取引を行う事業について経理的基礎をどのように審査するのかが課題として指摘されています。これに対し環境省も、今後の検討課題として認識する旨を回答しています。
そのため、具体的な財務要件については、今後の政省令や申請ガイドラインを確認する必要があります。
施設が保管・再生基準に適合していること
許可申請時には、実際に使用する事業場や施設についても審査される予定です。
例えば、
- 囲いが適切に設けられているか
- 保管物の飛散や流出を防止できるか
- 汚水の地下浸透や場外流出を防止できるか
- 火災防止対策が講じられているか
- 騒音・振動対策が行われているか
といった点が今後の基準となることが想定されています。
現在営業中の事業者にとっては、この施設基準への適合が特に大きな問題になる可能性があります。
既存の事業場でも、基準によっては囲い、舗装、排水設備、油水分離装置、保管区画などの改修が必要になる可能性があるためです。
もっとも、現時点では具体的な全国基準が確定しているわけではありません。検討資料に示されている数値や設備内容を、そのまま確定基準として扱うことは適切ではありません。
事業を適切に行う能力
申請者が、保管や再生を適切かつ継続して行える能力を有していることも許可基準の一つとして示されています。
第1回検討会では、外国人事業者を含め、日本語や法制度を十分理解できていないことが地域とのトラブルや法令違反につながる事例があるとして、制度の理解や講習などの必要性も指摘されました。
環境省は、制度周知について多言語対応を進める考えを示す一方、技術的基礎を確認する際には、制度を理解していることをどのように確認するか検討するとしています。
この点も、今後の許可申請実務では重要になる可能性があります。
欠格要件に該当しないこと
申請者が一定の欠格要件に該当しないことも、許可要件として示されています。
環境省資料では、例として拘禁刑に処された者などが挙げられています。
また、今後の政令事項として、どの法令違反による罰金刑を欠格要件の対象とするのか、どの「使用人」まで審査対象とするのかなども検討されることになっています。
法人で許可を申請する場合には、法人そのものだけではなく、役員等についても事前確認が必要になる可能性があります。
許可を受けなくてもよい事業者はいるのか
新制度では、すべての事業者に一律に許可が必要となるわけではありません。
環境省資料では、一定のケースについて許可を要しない仕組みが設けられる予定です。
一定規模以下の事業場
許可を要しない者として、まず「事業場の敷地面積が政令で定める面積以下である事業者」が示されています。
つまり、小規模な事業場については、許可対象から除外される可能性があります。
ただし、重要なのは、具体的に何平方メートル以下なら許可不要となるかは、現時点では確定していないということです。
環境省の検討資料でも、「許可を要しない使用済金属・プラスチック物品の保管又は再生及び保管の用に供する事業場の敷地面積の上限」は、政令で定める事項として整理されています。
そのため、「小規模だから許可は不要」と現時点で断定することはできません。
国や地方公共団体など
国、地方公共団体など、適正かつ確実に保管・再生を行うことができる者についても、許可不要とする方向が示されています。
具体的にどのような法人や機関がこの範囲に含まれるのかについては、今後の政令で明確化される予定です。
完成品製造工程の一部として再生を行う事業者
許可不要となるもう一つの重要な類型が、「完成品の製造における工程の一部として行われる再生」です。
環境省資料では、製鉄や精錬などが例として挙げられています。
例えば、スクラップを原料として受け入れ、それを製鉄・精錬工程の中で原材料として使用する場合などが想定されています。
もっとも、どこからが「再生業」で、どこからが「完成品の製造工程」なのかは、実務上簡単に判断できない場合があります。
そのため、技術検討会でも「完成品の製造工程」をどのように定義するかが主要な検討事項とされています。
切断、圧縮、破砕などを行っているからといって、当然に許可不要になるわけではありません。
自社の工程が「再生業」に該当するのか、「完成品製造工程の一部」と評価されるのかについては、今後示される判断基準を確認する必要があります。
既存の廃棄物処理業者などには「みなし許可」の仕組み
新制度では、既に別の法律に基づいて一定の許可や認定を受けている事業者について、改めて同じ内容の許可を取得しなくてもよい「みなし許可」の仕組みも設けられる予定です。
環境省資料では、次のような事業者が対象として示されています。
- 一般廃棄物・産業廃棄物の処理業者等
- 廃棄物処理施設の設置者
- 資源有効利用促進法の認定事業者等
- 自動車リサイクル法の解体業者・破砕業者
- 小型家電リサイクル法の認定事業者等
- プラスチック資源循環法の認定事業者等
- 再資源化事業等高度化法の認定事業者等
これらの事業者については、許認可を受けている事業内容に応じて、要適正再生使用済金属・プラスチック物品の再生等を行うことができる仕組みが予定されています。
「みなし許可」でも保管基準は守る必要がある
ここで注意したいのは、「みなし許可」であれば新制度の規制が一切かからないわけではないという点です。
環境省資料では、みなし許可の対象となる事業者についても、保管基準や再生基準などの遵守義務は同様に課されるとされています。
したがって、既に産業廃棄物処分業の許可や自動車リサイクル法上の許可を持っている事業者であっても、
「自社は既存許可があるから何も準備しなくてよい」
ということにはなりません。
新制度で定められる保管基準や帳簿管理については、別途確認が必要です。
既存許可の「事業範囲」にも注意
みなし許可が認められる場合でも、どのような使用済金属・プラスチック物品を、どの範囲まで取り扱えるかは、既存の許認可内容との関係で判断されることになります。
環境省の検討資料でも、ガイドラインの構成案として「みなし許可対象事業者の事業範囲」を明らかにする予定が示されています。
そのため、既存許可を持つ事業者は、現在保有している許可証や認定書の内容と、実際にスクラップヤードで行っている保管・再生行為を照合しておくとよいでしょう。
とりわけ、既存許可の範囲外で有価物の保管・再生を行っている場合には、新制度による別途の許可が必要になる可能性があります。
有害使用済機器の届出制度は廃止へ
今回の改正に伴い、平成29年の廃棄物処理法改正によって導入された「有害使用済機器保管等届出制度」は廃止される予定です。
これまで、有害使用済機器として家電4品目や小型家電28品目などを保管・処分する事業者には、都道府県知事への届出や処理基準の遵守が求められていました。
新制度の施行後は、これらの対象事業者も新たな許可制度の対象となる方向です。
そのため、現在、有害使用済機器保管等届出を行っている事業者は、制度廃止後の移行手続について特に注意する必要があります。
今後、経過措置や申請受付時期などが公表された際には、現在の届出だけで営業を継続できる期間や、新たな許可申請が必要となる時期を確認することが重要です。
スクラップヤードに求められる保管基準
新制度では、許可を取得するだけでなく、事業開始後も保管・再生に関する基準を継続して守ることが求められます。
環境省の検討資料では、スクラップヤードに求められる保管基準・再生基準のイメージとして、囲い、掲示、保管物の高さ、飛散・流出防止、地下浸透防止、汚水流出防止、騒音・振動防止、火災・延焼防止、分別保管などが示されています。
ただし、2026年8月時点では、具体的な数値や設備仕様のすべてが確定しているわけではありません。以下で紹介する「5m」「200㎡」「2m」などの数値は、現在の有害使用済機器制度や自治体条例を参考にした検討案です。
事業者としては、今すぐ検討案どおりに大規模な設備工事を行うというより、まずは自社の現状がどこまで対応できているかを確認しておくことが重要です。
囲いの設置
環境省の検討資料では、事業場所の範囲を明確にし、みだりに人が立ち入ることを防止するため、事業場の周囲に囲いを設ける方向が検討されています。
さらに、スクラップの荷重が囲いに直接かかる可能性がある場合には、飛散・流出・崩落を防止するため、構造耐力上安全な囲いとする考え方が示されています。
既存のスクラップヤードでは、単に敷地境界を示すフェンスだけでなく、鉄板などを用いた堅牢な囲いを設置しているケースもあります。
今後、事業者が確認しておきたいのは、
- 敷地全体が適切に囲われているか
- 出入口以外から容易に人が立ち入れないか
- スクラップが囲いに直接荷重をかけていないか
- 囲いに腐食、傾き、破損などがないか
といった点です。
特にスクラップを囲いに寄せて高く積み上げている事業場では、囲い自体の強度が許可審査上の論点になる可能性があります。
掲示板の設置
事業場が使用済金属・プラスチック物品の保管・再生場所であることを外部から確認できるよう、掲示板の設置も検討されています。
環境省資料では、掲示事項として、
- 保管・再生する物品
- 管理者の情報
- 許可年月日
- 許可番号
などを記載する方向が示されています。
現在の有害使用済機器制度では、縦横60cm以上の掲示板が基準となっており、千葉県条例では縦横90cm以上とする例も紹介されています。
もっとも、新制度における掲示板の大きさや記載事項はまだ確定していません。
そのため、現時点では、事業場入口付近の見やすい場所に掲示スペースを確保できるか、現場責任者や連絡先を明確にできる体制になっているかを確認しておくとよいでしょう。
保管物の高さに制限が設けられる可能性
スクラップの積み上げ高さについても、新制度の重要な論点となっています。
環境省資料では、屋外で容器を用いずに保管する場合、周辺への飛散・流出や火災を防止する観点から、保管方法に関する規定を設けることが検討されています。
特に、金属スクラップとプラスチックスクラップが混在し、電池など発火のおそれがある物品の混入を排除できない場合については、保管高さの上限を例えば最大5mとする案が示されています。
一方で、金属スクラップだけ、またはプラスチックスクラップだけといった単一素材を保管する場合には、高さの上限を設けない考え方も検討されています。
ここで注意したいのは、5mという数値が現時点で全国一律の確定基準ではないということです。
今後、物品の種類や保管形態によって異なる基準となる可能性があります。
囲いへの接し方によって保管方法が変わる可能性
保管物の高さだけでなく、スクラップをどのような形で積み上げるかについても検討されています。
環境省資料では、屋外で容器を用いずに保管する場合について、
- 堅牢な囲いに接していない場合
- 一方が堅牢な囲いに接している場合
- 三方が堅牢な囲いに接している場合
に分けて基準を検討しています。
例えば、囲いに接していない場合は水平面に対して50%の勾配とする案、一方が堅牢な囲いに接している場合は、壁の上辺から垂直に50cm下がった高さまたは5mのうち低い方を最大高さとする案などが示されています。
事業者としては、単純に「何メートルまで積めるか」だけでなく、現在のスクラップの積み方や囲いとの位置関係も確認しておく必要があります。
容器やフレコンで保管している場合
スクラップをコンテナ、フレコン、パレットなどを使用して保管する事業者も少なくありません。
環境省の検討資料では、容器を用いて屋外で保管する場合についても高さ制限を設ける方向が検討されている一方、安定して直立している容器やフレコン、ダイス状に圧縮した金属などについては、勾配規定を適用しない考え方も示されています。
つまり、容器を使っているだけで自動的に規制対象外になるわけではなく、「安定して保管できているか」「転倒・崩落のおそれがないか」という実質的な安全性が重視される可能性があります。
コンテナやフレコンを積み上げている事業者は、転倒防止措置や積み上げ方法を今のうちに確認しておくとよいでしょう。
汚水・油の流出と地下浸透への対策
スクラップヤードでは、保管する物品から油や液体が漏れ出す場合があります。
使用済機械、モーター、自動車部品、バッテリーなどを取り扱う場合には、雨水と混ざった汚水が事業場外へ流出したり、土壌へ浸透したりする可能性もあります。
このため環境省の検討資料では、公共用水域、土壌、地下水を汚染するおそれがある場合について、
- 保管場所の床面をコンクリートなどの不浸透性材料で覆う
- 油水分離装置を設置する
- 排水溝などの設備を設ける
といった対策を求める方向が示されています。
全面舗装が必要になるとは限らない
ここで注意したいのは、資料では「汚水が生じるおそれがある場合」にこうした措置を求める考え方が示されている点です。
したがって、すべてのスクラップヤードについて一律に事業場全面をコンクリート舗装しなければならないと確定しているわけではありません。
実際の基準は、保管する物品や油・汚水発生のおそれを踏まえて定められる可能性があります。
ただし、現在、
- 未舗装の土の上で油分を含む機械を保管している
- 雨水がそのまま場外へ流れる
- 排水経路が不明確である
- 油漏れが発生しても回収できる構造になっていない
という場合は、将来的な設備対応が必要になる可能性が高いため、早めに現状を把握しておく必要があります。
騒音・振動対策も重要な許可後の管理事項に
スクラップヤードをめぐる周辺住民からの苦情で特に問題になりやすいのが、騒音と振動です。
スクラップヤードでは、
- 大型車両の出入り
- 荷下ろし
- 重機による積込み
- スクラップの選別
- 切断・圧縮・破砕設備の稼働
などによって、大きな音や振動が発生することがあります。
環境省の検討資料では、こうした作業について、生活環境の保全上の悪影響が生じないよう必要な措置を求める方向が示されています。
対策としては、防音壁、小型車両・重機の使用、作業方法の見直しなどが想定されています。
事業者としては、設備だけでなく、
- 早朝・夜間に大きな作業をしていないか
- スクラップを高所から落としていないか
- 隣接する住宅との距離は十分か
- 苦情を記録・管理しているか
といった運用面も確認しておく必要があります。
火災・延焼を防ぐための区分保管
スクラップヤードで特に重大な事故につながるのが火災です。
金属スクラップそのものは燃えにくい場合でも、雑品スクラップにはリチウムイオン蓄電池などの電池類、油類、モーターその他の発火原因となり得る物品が混入することがあります。
環境省の資料では、火災のおそれがある物品について、他の物品と区分して保管し、電池・潤滑油などを適切に回収・処理することが検討されています。
「200㎡以下・2m以上」は現時点では検討の参考値
現行の有害使用済機器に関する基準では、
- 1つの保管単位を200㎡以下
- 保管単位同士の間隔を2m以上
- 仕切りがある場合は間隔を不要とする
という考え方があります。
今回の技術検討会でも、この基準を参考に、金属とプラスチックが混在し、電池等の混入を排除できない場合の区分保管や保管面積の制限が検討されています。
ただし、これも新制度の確定基準ではありません。
また、単一素材の金属スクラップやプラスチックスクラップについては、区分保管や面積制限を不要とする案も示されています。
一方、第1回検討会では消防庁から、プラスチックスクラップは火災時に急速に延焼し、消火も困難であるため、単一素材であっても一定規模を超える場合には安全対策が必要ではないかとの意見も出されています。
この部分は今後の検討によって変更される可能性があるため、最終的な政省令を確認する必要があります。
電池・油類などは分けて管理できる体制を
新制度への準備として、設備面と同じくらい重要なのが、受入時の分別です。
環境省の基準イメージでは、電池、油類、モーターなど、火災を発生させるおそれがある物品を分別して保管する措置が示されています。
特に、雑品スクラップを大量に受け入れている場合、搬入された状態のまま山積みにすると、内部に電池等が混入していても確認できないことがあります。
そのため、
- 搬入時に目視確認する
- 電池類を取り外す
- 発火のおそれがある物品を専用区画へ移す
- 危険物の混入状況を記録する
- 従業員に分別方法を周知する
といった運用を整えておくことが、今後の基準対応にもつながります。
現段階では「検討案」と「確定基準」を区別することが重要
今回の法改正について情報収集をしていると、「高さ5m」「200㎡」「2m」といった具体的な数字が目に入ります。
しかし、これらは2026年8月時点では、環境省の技術検討会で示されている検討内容や、現行の有害使用済機器制度・自治体条例を参考にした数値です。
環境省自身も、適正な事業者が対応できない基準とならないよう、関係業界の意見を踏まえて具体的な基準を検討するとしています。
そのため、事業者としては、
「検討資料に書いてある数字=すでに施行が決まった全国基準」
とは考えないことが重要です。
一方で、囲い、舗装、排水、油水分離、火災対策などは工事に時間や費用を要する場合があります。
政省令が公布されてから初めて事業場を確認すると、許可申請までに対応が間に合わない可能性もあります。
今の段階では、確定していない数値を前提に設備投資を急ぐよりも、まず現在の事業場について、どこに将来的な改修の可能性があるのかを洗い出しておくことが現実的です。
帳簿の作成・記録義務にも注意
新制度では、保管基準や再生基準を守るだけでなく、帳簿を作成して事業の流れを記録することも求められる予定です。
環境省資料では、許可業者に対し、対象物品の保管・再生基準の遵守とあわせて帳簿作成を義務付けることが示されています。
スクラップヤードでは、日々さまざまな物品が搬入され、選別・切断・圧縮などを経て搬出されます。
そのため行政側から見れば、
- どこから物品を受け入れたのか
- 何を、どのくらい受け入れたのか
- どのような方法で再生したのか
- 再生後の物品をどこへ搬出したのか
- 再生後に発生した残渣をどこへ搬出したのか
といった流れを確認できることが、適正な事業運営を判断するうえで重要になります。
帳簿に記載することが検討されている事項
環境省の技術検討会資料では、帳簿の記載事項として、次のような項目が検討されています。
保管に関する記録
物品を受け入れたり搬出したりした場合には、
- 受入年月日
- 搬出年月日
- 受入品目
- 搬出品目
- 受入元
- 搬出先
- 受入量
- 搬出量
などを記録する方向が示されています。
複数の取引先から受け入れている場合には、それぞれの受入元ごとに記録することが想定されています。
再生に関する記録
切断、圧縮、破砕などの再生を行う場合には、
- 再生年月日
- 再生方法
- 再生量
- 再生した物品の品目
などを記録する案が示されています。
例えば、受け入れた金属スクラップを切断した場合には「切断」、圧縮した場合には「圧縮」など、実際の工程が分かる形で管理することが想定されます。
残渣についても記録が必要となる可能性
再生工程では、すべてが有価物として出荷できるとは限りません。
選別や破砕によって残渣が発生する場合もあります。
環境省資料では、
- 残渣等の搬出年月日
- 残渣等の搬出先
- 残渣等の品目
- 残渣等の搬出量
などについても帳簿に記載する方向が示されています。
このような記録は、不適正処理や物品の行方不明を防止する意味でも重要になります。
紙の帳簿だけでなく電子管理も視野に
第1回技術検討会では、帳簿について「現在の時代であれば電子化していくことも議論の対象ではないか」との意見も出されています。
現時点では具体的な保存方法は確定していませんが、環境省資料では「帳簿への記載事項」「帳簿の保存方法」が省令事項として整理されています。
そのため、現在すでに表計算ソフトや業務システムで、
- 仕入日
- 仕入先
- 品目
- 重量
- 売却日
- 売却先
などを管理している事業者は、新制度への対応が比較的しやすい可能性があります。
一方、伝票だけで管理しており、品目別・取引先別の数量を後から確認できない場合には、帳簿制度の施行までに記録方法の見直しが必要になる可能性があります。
千葉県内のスクラップヤード事業者が特に注意したい点
千葉県内の事業者は、全国制度だけを確認すればよいわけではありません。
千葉県では、国による今回の法改正に先行してスクラップヤードへの規制が行われてきました。
環境省資料でも、自治体によるスクラップヤード条例の例として千葉県や千葉市などが挙げられています。
千葉県は国の制度設計にも深く関わっている
スクラップヤード環境対策技術検討会には、自治体委員として千葉県環境生活部の職員が参加しています。
また、環境省は令和8年6月から7月にかけて、条例を制定している自治体として、
- 茨城県
- 埼玉県
- 千葉県
- さいたま市
- 千葉市
- 越谷市
の6団体からヒアリングを実施しています。
ヒアリングでは、条例に基づく指導・監督の実績、事故や苦情の推移、不適正ヤードへの対応、警察・消防との連携などが確認されています。
つまり、今回の全国制度は、千葉県などが先行して実施してきた条例運用の経験も参考にしながら設計が進められているといえます。
国の制度ができても千葉県条例を無視できるとは限らない
事業者として特に注意したいのが、国の許可制度と既存の県・市条例との関係です。
今回の環境省資料では、全国的な最低限の基準をどのように設けるかについて議論されていますが、国の制度が施行された後に各自治体条例が具体的にどのように扱われるかについて、今回提供された資料だけでは最終的な整理は確認できません。
したがって現時点では、
「国の許可を取れば千葉県や市の条例対応は不要になる」
と考えるべきではありません。
国の制度、千葉県条例、所在地の市に独自条例がある場合はその条例について、それぞれ最新の規定を確認する必要があります。
千葉県では「現場責任者」の存在も重要視されている
第1回技術検討会では、千葉県の委員から、掲示板に記載する「管理者」について、千葉県条例における「現場責任者」と同等の位置付けにしてほしいとの意見が出されています。
背景には、行政が立入検査を行った場合や、苦情・事故などの緊急時に現場を訪問しても、責任者が不在で適切な対応ができない事例があることが挙げられています。
特に、現場従業員との意思疎通が十分にできず、行政指導への対応が遅れるケースも問題として指摘されています。
そのため、千葉県内の事業者は、
- 現場の責任者を明確にする
- 行政からの連絡に対応できる者を置く
- 従業員が責任者への連絡方法を理解している
- 法令や保管基準を現場責任者が把握している
といった体制づくりも重要になるでしょう。
基準違反や無許可営業をするとどうなる?
新制度には、許可制度を実効性のあるものとするため、行政処分や罰則も設けられます。
環境省資料では、基準違反や無許可営業などに対して、
- 報告徴収
- 立入検査
- 改善命令
- 措置命令
- 事業停止命令
- 許可取消し
- 罰則
などにより対応することが示されています。
立入検査が行われる可能性
許可業者に対しては、都道府県知事等による報告徴収や立入検査に関する規定が整備されます。
そのため、許可を取得した後も、
- 許可申請時の状態が維持されているか
- 保管基準を守っているか
- 帳簿が適切に作成されているか
- 不適正な物品の保管がないか
といった点を行政が確認できる仕組みとなります。
許可取得時だけ設備を整え、その後基準を守らなくてもよいという制度ではありません。
保管基準に適合しなければ改善命令・措置命令も
環境省資料では、保管基準等に適合していない場合には、改善命令や措置命令などによって対応することが示されています。
また、許可を失った事業者がスクラップを事業場に放置するようなケースについても、措置命令による対応が予定されています。
スクラップは大量になるほど撤去費用も高額になりやすいため、事業を廃止する場合にも適切な処理・搬出が必要です。
事業停止や許可取消しの可能性
違反行為を行った許可業者については、都道府県知事等による事業停止命令や許可取消しの対象となることが予定されています。
スクラップヤード事業者にとって、許可取消しや事業停止は事業継続そのものに直結する重大な処分です。
そのため、新制度では、許可取得後の継続的な法令管理がこれまで以上に重要になります。
無許可営業には重い刑事罰
今回の改正では、無許可営業などについて、廃棄物処理業者に対する罰則と同等の罰則を設けることが示されています。
環境省資料によれば、
無許可営業、許可の不正取得、事業停止命令違反、無確認輸出などについて、最大5年の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方
が科される制度となっています。
さらに法人については、最大3億円の罰金が示されています。
これは単なる届出漏れのような軽微な扱いではなく、新制度が強い実効性を持つ規制として設計されていることを示しています。
「知らなかった」で営業を続けないことが重要
特に注意したいのは、現在適法に営業している事業者であっても、制度施行後に自社が許可対象であることに気付かず、そのまま営業を続けてしまうケースです。
新制度では、有価物を取り扱っている事業者も対象となり得るため、
「うちは産業廃棄物を扱っていないから関係ない」
という判断だけでは不十分です。
施行前には必ず、
- 自社の取扱物品が規制対象か
- 保管業・再生業のどちらに該当するか
- 許可不要の小規模事業者に該当するか
- 既存許可によるみなし許可が使えるか
- 新たな許可申請が必要か
を確認する必要があります。
環境省資料では、法律施行前に受付準備の整った都道府県において、許可申請の受付や許可審査を開始する予定も示されています。
したがって、制度施行直前になって慌てて準備するのではなく、申請受付開始の情報を早めに確認し、必要書類や施設の適合状況を整理しておくことが重要です。
使用済鉛蓄電池や電子スクラップを輸出する場合の注意点
今回の法改正では、国内での保管・再生だけでなく、一定の使用済金属・プラスチック物品を海外へ輸出する場合の規制も強化されます。
環境省資料では、国内で収集された要適正再生使用済金属・プラスチック物品のうち、バーゼル法上の「特定有害廃棄物等」に該当するものを「特定要適正再生使用済金属・プラスチック物品」とし、再生等はなるべく国内で適正に行うという「国内再生原則」を設けることが示されています。
対象例としては、使用済鉛蓄電池、電子スクラップ、一定の使用済プラスチックなどが挙げられています。
輸出には環境大臣の確認が必要
特定要適正再生使用済金属・プラスチック物品を輸出しようとする場合には、環境大臣の確認を受けなければならない仕組みが導入されます。
環境省資料では、輸出確認の主な考え方として、
- 国内の設備・技術では適正な再生が困難か
- 国内再生が可能な場合、輸出によって国内の適正な再生・保管に支障が生じないか
- 輸出先で行われる再生・保管が、国内基準を下回らない方法か
といった点を審査することが示されています。
つまり、単に「海外で買い手がいる」「海外の方が高く売れる」といった事情だけで自由に輸出できる制度ではありません。
特に、鉛蓄電池や電子スクラップの輸出を事業の一部としている事業者は、今後、国内での再生可能性まで含めて確認されることを前提に取引を検討する必要があります。
バーゼル法の手続とは別に確認が必要となる場合がある
第1回技術検討会では、今回の輸出確認とバーゼル法との関係について具体的な質疑が行われています。
環境省は、今回の改正によってバーゼル法上の「特定有害廃棄物等」の対象範囲そのものを広げるわけではないと説明しています。
一方で、輸出する物品がバーゼル法上の特定有害廃棄物等に該当し、かつ今回の「特定要適正再生使用済金属・プラスチック物品」にも該当する場合には、
バーゼル法上の手続に加えて、改正廃棄物処理法に基づく新たな輸出確認も必要になる
と説明されています。
輸出事業者にとっては、手続が一つ増える可能性があるため、取扱物品ごとの法的位置付けを早い段階で整理することが重要です。
無確認輸出には重い罰則
環境大臣の確認を受けずに対象物品を輸出した場合には、罰則の対象となります。
環境省資料では、無確認輸出については未遂罪や予備罪も設けることが示されています。
また、前述のとおり、無確認輸出を含む重大な違反行為については、最大5年の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、もしくはその併科が予定されています。法人については最大3億円の罰金が示されています。
海外向けにスクラップを販売している事業者は、国内取引だけを行っている事業者以上に、新制度の対象物品の判定と輸出手続に注意する必要があります。
施行までにスクラップヤード事業者が準備しておきたいこと
法律は公布されていますが、2026年8月時点では、許可不要となる具体的な敷地面積や、保管基準の詳細、帳簿様式など、政省令・ガイドラインで定められる事項が残っています。
そのため、現段階で最も大切なのは、確定していない基準を前提に過剰な設備投資をすることではなく、自社の現状を整理して、基準確定後すぐに対応できる状態にしておくことです。
1.取扱物品を一覧化する
まず、自社が現在扱っている物品を一覧にしましょう。
例えば、
- 鉄スクラップ
- 非鉄金属スクラップ
- 雑品スクラップ
- 使用済家電
- 電子基板
- 使用済プラスチック
- 鉛蓄電池
- リチウムイオン蓄電池
- モーター
- 被覆電線
などです。
同じ「スクラップ」であっても、物品の種類によって火災、水質汚染、輸出規制などのリスクが異なります。
さらに、「単一素材なのか」「電池等が混在しているのか」も重要です。
2.保管だけか、再生まで行っているか整理する
次に、事業場内で行っている作業を確認します。
例えば、
- 受け入れてそのまま保管して売却
- 手作業で選別
- 重機で選別
- 切断
- 圧縮
- 破砕
- 洗浄
などです。
今回の制度では、譲渡のための保管と、切断・圧縮・破砕・選別・洗浄などの再生がそれぞれ許可制度の対象として整理されています。
自社の作業内容が「保管業」「再生業」のどちらに該当しそうかを把握しておくと、将来の申請準備がしやすくなります。
3.敷地と設備を点検する
現在のヤードについて、次のような点を確認しておきましょう。
- 囲いは設置されているか
- 囲いにスクラップの荷重がかかっていないか
- 保管場所の床面は土か、舗装されているか
- 雨水や汚水はどこへ流れるか
- 排水溝はあるか
- 油水分離装置はあるか
- 住宅との距離はどの程度か
- 防音対策はあるか
- 火災時に延焼を防止できる区画があるか
環境省資料では、これらの事項が保管・再生基準の主要な検討項目となっています。
現状を写真や平面図で記録しておくことも、今後の許可申請や設備改修の検討に役立ちます。
4.電池や油類を分別できるか確認する
雑品スクラップを扱う場合には、特にリチウムイオン蓄電池などの混入が火災リスクにつながります。
そのため、
- 受入時に危険物を確認する
- 電池を分別する場所を決める
- 油を含む部品を別管理する
- 従業員に分別方法を周知する
といった体制を準備しておくとよいでしょう。
環境省資料でも、電池や油類、モーターなど、火災のおそれがある物品を分別・保管する措置が検討されています。
5.取引記録を整える
今後は帳簿作成が重要になります。
現在の仕入・売上管理が、
「月末に合計金額だけを確認している」
という状態であれば、制度対応が難しくなる可能性があります。
最低限、
- 日付
- 相手方
- 品目
- 数量
- 搬入・搬出
- 再生内容
を追跡できるようにしておくことが望ましいでしょう。
6.役員や事業責任者の情報を整理する
許可申請では、申請者の欠格要件や事業を適切に行う能力も審査対象となる予定です。
法人の場合は、
- 代表者
- 役員
- 事業場責任者
- 一定の使用人
などが審査対象となる可能性があります。
今後、誰までが欠格要件の審査対象となるか政令で整理される予定です。
7.申請受付開始の情報を確認する
環境省資料では、法施行前に、受付準備が整った都道府県から許可申請の受付と審査を開始する予定が示されています。
そのため、施行日の直前ではなく、千葉県や所在地の市から発表される申請受付情報を早めに確認することが重要です。
よくある質問
現在営業しているスクラップヤードも新しい許可が必要ですか?
自社が新制度の許可対象となる保管業・再生業に該当する場合には、現在営業中の事業者も新制度への対応が必要になると考えられます。
ただし、既存事業者に対する具体的な経過措置や申請時期については、今後の政省令・ガイドライン等を確認する必要があります。
小さなスクラップヤードなら許可は不要ですか?
一定規模以下の事業場については許可不要とする制度が予定されています。
ただし、その基準となる敷地面積は政令で定めることとされており、2026年8月時点では具体的な面積は確定していません。
したがって、現時点で「○㎡以下だから許可不要」と判断することはできません。
鉄スクラップだけを扱っている場合も許可が必要ですか?
金属スクラップも新制度の対象になり得ます。
ただし、対象物品の具体的な範囲や、「再生原料」に該当して規制対象から外れる時点については、今後さらに明確化される予定です。
また、単一素材の金属スクラップについては、保管高さや区分保管等の基準を緩和する方向も検討されていますが、これも現時点では確定基準ではありません。
産業廃棄物処理業の許可があれば新しい許可は不要ですか?
既存の廃棄物処理業者等については、許可事業者とみなす仕組みが設けられる予定です。
ただし、みなし許可であっても、新制度の保管基準・再生基準などを守る義務はあります。
また、現在の許可範囲と実際の有価物の取扱内容が一致しているかについても確認が必要です。
千葉県条例の許可があれば国の許可は不要ですか?
今回提供された環境省資料からは、国の新制度施行後に千葉県条例上の許可がどのように扱われるかについて、最終的な整理までは確認できません。
そのため、現時点で「千葉県条例の許可があれば国の許可も不要になる」と断定することはできません。
国の政省令とあわせて、千葉県や所在地の市から示される移行措置を確認する必要があります。
今すぐ高さを5m以下にした方がよいですか?
環境省資料で示されている5mは、2026年8月時点では検討案です。
特に、電池等の発火のおそれがある物品の混入を排除できない場合について、例えば最大5mとする案が示されている段階です。
したがって、「全国一律で5m以下とすることがすでに決まった」と理解するのは正確ではありません。
一方、崩落や火災の危険がある積み方をしている場合は、法施行を待たず安全面から改善を検討する必要があります。
油水分離装置は必ず設置しなければなりませんか?
検討資料では、油の漏洩や汚水の発生・流出により公共用水域、土壌、地下水を汚染するおそれがある場合に、油水分離装置や排水溝、不浸透性の床面などを求める方向が示されています。
すべての事業場に一律で設置が確定しているわけではありません。
いつから新制度が施行されますか?
環境省資料によれば、改正法は2026年6月19日に公布され、公布日から2年6か月を超えない範囲内で政令により定める日に施行されます。
したがって、施行日は2028年12月19日より前となります。
また、環境省は2026年度内を目途に政省令を整備する方針を示しています。
記事のまとめ
今回の法改正により、スクラップヤード事業者を取り巻くルールは大きく変わります。
これまで有価物として取り扱われてきた金属スクラップや使用済プラスチックについても、物品の種類や保管・再生の方法によっては、新たな許可制度の対象となる可能性があります。さらに、許可を取得するだけでなく、囲いの設置、飛散・流出防止、汚水対策、騒音・振動対策、火災防止、分別保管、帳簿作成など、日常の事業運営そのものにも一定の基準が求められる方向です。
一方で、2026年8月時点では、許可不要となる敷地面積や保管物の高さなど、具体的な数値基準には未確定の部分もあります。そのため、現段階では検討中の数値だけを見て設備改修を急ぐのではなく、自社の取扱物品、保管方法、再生工程、設備、帳簿管理などを整理しておくことが大切です。
特に千葉県内の事業者は、今後の国の制度だけでなく、既存の千葉県や市の条例との関係も確認する必要があります。
新制度への対応で重要なのは、施行直前になって慌てるのではなく、自社が許可対象になるのか、みなし許可や適用除外に該当するのか、現在の事業場が将来の基準に対応できそうかを早めに確認しておくことです。
今後、政省令やガイドラインの内容が具体化すれば、必要となる手続や設備対応もより明確になります。スクラップヤード事業を継続していくためにも、環境省や千葉県などの最新情報を確認しながら、計画的に準備を進めていきましょう。

